「キャンセル料をいただくのは申し訳ない……」「キャンセル料をいただくかどうか、その都度悩む」――花の教室を運営する方が、キャンセルポリシーについてnoteに書いていた言葉です。個人でレッスンや相談を受けていると、ルールがないまま、そのたびに気まずい判断をすることになります。
この記事は、レッスン・講座・オンライン相談のように、時間を予約してもらう仕事を個人や少人数で営んでいる方に向けたものです。そのまま使える例文を先に置きます。金額の決め方と、法律が定めている上限はその次です。
この記事の結論
キャンセルポリシーは、いつまでに・いくら・どう連絡するか・例外の4つを、予約する前に見える場所へ置けば機能します。金額は業界の相場ではなく、自分の教室でキャンセルが出たときの平均的な損失から決めます。消費者契約法はそれを超える部分を無効とし、2か月超・5万円超の語学教室や家庭教師などのコース契約には、特定商取引法の上限もあります。
目次
サービス業の予約運用全般は、サービスビジネス向けリソース集にまとめています。
レッスン・相談のキャンセルポリシー例文
キャンセルポリシーに必要なのは、期限・金額・連絡方法・例外の4つです。飲食店やホテルの例文をそのまま借りると「コース料金の100%」のような、個人のレッスンには合わない書き方になりがちなので、形の違う2つを置きます。
単発のレッスン・オンライン相談の場合
キャンセルについて
ご予約の変更・キャンセルは、予約確認メールのリンク、または本メールへのご返信でお知らせください。
・3日前まで:無料
・2日前〜前日:レッスン料金の50%
・当日・ご連絡のない場合:レッスン料金の100%
この時間は、ご予約をいただいた時点でほかの方の受付を止めています。前日以降は代わりのご予約がほとんど入らないため、上記の金額としています。
ご本人やご家族の急な体調不良の場合は、1回に限り別の日へ振り替えます。
月謝・回数制の教室(振替あり)の場合
お休みと振替について
レッスン前日の18時までにご連絡いただいた場合は、同じ月のうちに振替レッスンをご案内します。
前日18時を過ぎてからのお休み、ご連絡のないお休みは、振替の対象外となり、その回は受講済みとして扱います。
材料を事前に用意するレッスンでは、振替の場合も材料費(1回800円)をいただきます。
2つめの例のように、お金を取る代わりに「振替の期限」で線を引く方法もあります。キャンセル料を設定したくない教室でも、ルールがあることで、その都度悩む必要がなくなります。例文の日数や割合は、次の章の考え方で自分の数字に置き換えてください。
キャンセル料は「相場」ではなく自分の損失から決める
キャンセル料の金額を調べると、「前日50%・当日100%が相場」といった業種別の目安が並びます。ところが法律が物差しにしているのは、相場ではありません。
消費者契約法第9条第1号は、キャンセル料などの合計が、解除の時期などの区分ごとに「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」について、その超える部分を無効としています(出典: e-Gov法令検索「消費者契約法」)。そして消費者庁の逐条解説は、この平均的な損害の額について、個々の事業者の契約を類型ごとに見た平均値であり、「当該業種における業界の水準を指すものではない」と明記しています(出典: 消費者庁「消費者契約法 逐条解説 第9条」、2026年9月時点の掲載版)。
つまり、他の教室が当日100%だから自分も100%で大丈夫、とは言えません。見るべきなのは、自分の教室でその時期にキャンセルが出たとき、平均してどれだけ失っているかです。逐条解説は考慮する事項の例として、サービスの対価、解除の時期、代わりの契約が入る可能性、かかった費用を回収できる可能性を挙げています。
個人のレッスンなら、次のように整理できます。
| キャンセルの時期 | その時期の枠が埋め直せた割合(自分の記録) | 1回あたりの平均的な損失の目安 |
|---|---|---|
| 4日以上前 | 9割 | 5,000円 × 1割 = 500円 → 無料でもほぼ困らない |
| 2日前〜前日 | 5割 | 5,000円 × 5割 = 2,500円 → 50% |
| 当日 | ほぼ0 | 5,000円 → 100% |
表は1回5,000円のレッスンで、キャンセルしても浮く費用がほとんどない場合の例です。材料を先に仕入れる教室は、回収できない材料費を足します。反対に、会場を借りていてキャンセルで会場費が戻るなら、その分を引きます。埋め直せた割合は、3か月ほどキャンセルと再予約を記録すれば自分の数字が出ます。この表は考え方を整理するためのもので、個別の金額が有効かどうかの法的な判断ではありません。迷う場合は、弁護士や消費生活センターに相談してください。
「なぜこの金額か」に答えられるようにしておく
2022年の法改正で、消費者契約法第9条に第2項が加わりました。事業者がキャンセル料を請求する場面で、消費者から説明を求められたときは、算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならない、という規定です(努力義務)。
求められているのは細かな原価の開示ではありません。逐条解説は、結婚式場の例として「装飾品の仕入れや人員の手配を挙式の1か月前で完了させており、中止になっても費用が発生する。そのため人件費等を含めて設定している」という程度の回答で足りるとしています。考慮した費用の項目を説明すれば十分、という扱いです。
個人のレッスンなら、例文に入れた「この時間はご予約の時点でほかの方の受付を止めています。前日以降は代わりのご予約がほとんど入らないため」という一文が、その説明の役目を果たします。根拠をポリシー自体に書いておけば、聞かれてから言葉を探す必要がなく、お客様も金額に納得しやすくなります。
月謝・コース制の教室は、特定商取引法の上限を先に確認する
1回ごとの予約とは別に、期間と金額の大きいコース契約には特定商取引法の「特定継続的役務提供」の規制がかかる場合があります。対象は語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・エステティック・美容医療・結婚相手紹介サービスの7つで、語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室は契約期間が2か月を超え、かつ金額が5万円を超えるものが対象です。対象になると、クーリング・オフや中途解約のルールが適用され、中途解約で請求できる額に上限が決まっています(出典: 消費者庁「特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供」、2026年9月時点)。
| 役務 | レッスン開始前の解約 | レッスン開始後の解約(受講済み分の対価に加えて) |
|---|---|---|
| 語学教室 | 1万5,000円 | 5万円か契約残額の20%の、低いほう |
| 家庭教師 | 2万円 | 5万円か1か月分の授業料の、低いほう |
| 学習塾 | 1万1,000円 | 2万円か1か月分の授業料の、低いほう |
| パソコン教室 | 1万5,000円 | 5万円か契約残額の20%の、低いほう |
たとえば3か月・6万円の英会話コースを、始める前に解約された場合に請求できるのは1万5,000円までです。「入会後のキャンセルは返金しません」と書いていても、この上限を超える部分は受け取れません。単発の予約と同じ感覚でコースのポリシーを書かないことが要点です。対象かどうかは契約の中身で決まるため、コース販売を始める前に一度確認してください。
無断キャンセルの料金を請求するとき
連絡のないまま当日を迎えたとき、請求の連絡を送る前に3つを確認します。
- ポリシーを予約の前に示していたか。予約ページや確認メールに載っていなかったルールを、後から持ち出すと揉めます
- 金額がポリシーどおりか。その場の気持ちで上乗せしない。前の章で見たとおり、平均的な損害を超える部分は無効です
- 本当に無断だったか。迷惑メールに入った連絡や、SNSのメッセージを見落としていないか
件名
9月10日(水)10:00のレッスンについて
本文
〇〇様
本日10:00からのレッスンにお越しがなかったため、ご連絡いたしました。ご体調などお変わりないでしょうか。
ご予約時にご案内したキャンセルポリシーのとおり、ご連絡のないキャンセルはレッスン料金の100%(5,000円)を申し受けております。この時間はご予約の時点でほかの方の受付を止めていたため、このように定めております。
お支払いは〇月〇日までに、下記の方法でお願いいたします。(お支払い方法)
何か事情がおありでしたら、このメールにご返信ください。
文面は責める言葉を入れず、事実・金額・根拠・期限だけにします。最初に安否を気づかう一文を置くのは、事故や急病だった場合に、請求の文面だけが届くことを避けるためです。やむを得ない事情だと返信が来たら、振替を案内するなど柔軟に扱って構いません。
現実には、後から請求して回収するのは手間がかかり、全額が戻らないこともあります。何度も起きるなら、請求の文面を磨くより、次の章で触れる事前決済のように、予約の時点で受け取っておく形を検討するほうが確実です。
決めたルールを、予約の前に見える場所へ置く
ポリシーは、あとから伝えると揉めます。冒頭のnoteでも、予約する前に分かるようにしておくことが一番のポイントとして挙げられていました。置き場所は次の4つです。
- 予約ページの説明文:期限と金額を、メニューのすぐ下に書く
- 予約フォームの同意チェック:「キャンセルポリシーを確認しました」を必須項目にする
- 予約確認メール:同じ文面を載せ、キャンセル用のリンクを添える
- 前日のリマインド:「本日中のご連絡なら〇%」と、期限が切り替わる前に知らせる
もう1つの選択肢が、予約の時点で料金を受け取っておくことです。キャンセル料を後から請求する必要がなくなり、ポリシーに沿って返金するかどうかを決めるだけになります。無断キャンセルそのものを減らす仕組みは事前決済つき予約システムの記事、確認メールとリマインドの文面は予約確認メールの例文にまとめています。以下では、この4か所と事前決済をまとめて扱えるツールの一例として、SailLab を取り上げます。
SailLab(セイルラボ)

SailLab は、予約ページ・予約フォーム・確認メールと事前決済を1つにまとめた国産の予約システムです。
- 予約フォームにチェックボックスの必須項目を作れます。ポリシーへの同意を予約の条件にできます
- 確認メールとリマインドの文面を編集できます(Light以上)。ポリシーの全文と、お客様自身が変更・キャンセルできるリンクが同じメールに入ります
- 予約時のカード決済に対応します(Standard以上)。返金は、ポリシーに沿って全額・一部を自分で行います
| プラン | 月額(税抜) | キャンセル対応でできること |
|---|---|---|
| Free | ¥0 | 確認メール・リマインドの自動送信、お客様によるキャンセル |
| Light | ¥1,000 | 上記に加え、メール文面の編集 |
| Standard | ¥1,500 | 上記に加え、事前決済(SailLab の手数料3%) |
| Professional | ¥2,800 | Standard と同じ機能(SailLab の手数料0%) |
事前決済には、上の手数料とは別に Stripe の決済手数料がかかります(2026年9月時点。詳細は料金ページ)。レッスンや相談を1人で受け、キャンセルのたびに判断している方に向いたツールです。単発レッスンの集客と手数料についてはストアカの手数料の記事も参考になります。SailLab は無料で予約ページを作れます(クレジットカード登録は不要です)。
田口 奈津子 / SailLab 編集部
SailLab 編集部で、予約受付・事前決済・無断キャンセル対策など、対面とオンラインでサービスを提供する事業者向けの記事を担当しています。