「本格的にフリーランスで活動したいなと思っています。でも、どうやって活動すればいいのか、お客さんを増やしていく方法がわからなくて、前に進めずにいます。」――副業でカウンセリングを続けてきた方が、Yahoo!知恵袋に書いていた相談です。「周りにも相談できる人がいないので、このままだと開業しても失敗しそうで怖いです」とも書いています。
開業の解説記事の多くは、資格、開業資金、場所、開業届、集客の順に進みます。どれも必要ですが、ひとりで開業するカウンセラーが自分では気づきにくいのは、法律が引いている3本の線のほうです。名乗り方、医療との境目、そして予約のときに何を聞くか。この記事ではその3つを条文とガイドラインで確認し、開業までの順番にまとめます。
この記事の結論
カウンセラーとして開業するのに国家資格は要りませんが、公認心理師でない人は「心理師」を名前に使えず、診断や治療は医師の業務です。準備でいちばん見落とされるのは予約フォームで、通院歴や服薬を尋ねると、その回答は要配慮個人情報になります。漏えいすれば、1人分でも個人情報保護委員会への報告が必要です。
ひとりで事業を営む方向けの記事は個人・小規模チーム向けリソース集にまとめています。
名乗り方:「心理師」は資格がないと使えない
カウンセリングの仕事そのものを、国家資格を持つ人に限る法律はありません。公認心理師法が制限しているのは名称の使用で、第44条は次のように定めています。
「公認心理師でない者は、公認心理師という名称を使用してはならない。」「前項に規定するもののほか、公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。」(公認心理師法 第44条)
見落とされやすいのは2項です。「公認」を付けなくても、「心理師」という文字を含む名前は使えません。屋号やプロフィール、SNSの肩書きを決める前に確認しておく部分です。
| 名乗り方の例 | 公認心理師でない人が使えるか |
|---|---|
| 公認心理師 | 使えない(第44条第1項) |
| 「◯◯心理師」など、心理師を含む名前 | 使えない(第44条第2項) |
| カウンセラー、心理カウンセラー | この条文の制限の対象ではない |
| 民間資格の名称(「◯◯認定カウンセラー」など) | その資格を持っていれば、発行団体の規定に従って使う |
民間資格を名乗る場合は、国家資格と取り違えられない書き方にしておくと、お客様とのあいだで誤解が起きません。「◯◯協会認定」のように発行元を並べて書くのが1つの方法です。
医療との線引き:診断と薬の判断は医師に任せる
「医師でなければ、医業をなしてはならない。」医師法第17条のこの一文が、カウンセリングと医療の境目です。お話を聴き、気持ちの整理を手伝うことはカウンセリングですが、病名を告げる、薬を減らすよう勧める、といった判断は医師の領域に入ります。
| カウンセリングで行うこと | 医師に任せること |
|---|---|
| 話を聴き、状況や気持ちを一緒に整理する | 「うつ病だと思います」のように病名を告げる |
| 受診を考えてもよい状態かを、本人と話し合う | 服薬をやめる・減らす・増やすよう勧める |
| 通院中の方の話を聴く | 主治医の治療方針と違うことを勧める |
なお、公認心理師には、支援の対象者に主治の医師があるときは、その指示を受けなければならないという規定があります(公認心理師法 第42条第2項)。資格を持たないカウンセラーにこの条文は直接かかりませんが、通院中の方を受ける場合にどう連絡を取るかは、開業前に方針として決めておくほうが迷いません。
⚠️ どこからが医業にあたるかは、行為ごとの判断になります。ここに書いたのは条文の要点で、法的な助言ではありません。迷う場面があれば、専門家に確認してください。
予約フォームで、通院歴と服薬は聞かない
ひとりで開業するカウンセラーが持つ個人情報のうち、いちばん扱いが重いものは、予約フォームで生まれます。通院しているか、薬を飲んでいるか、診断を受けたことがあるか。これらの回答は、個人情報保護法の「要配慮個人情報」にあたります。
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、要配慮個人情報の「病歴」の例として「統合失調症を患っている」を挙げ、病院等を受診したという事実、薬局等で調剤を受けたという事実も該当するとしています。「通院中ですか」「服薬中の薬はありますか」への回答は、この範囲に入ります。
| 予約フォームの項目 | 要配慮個人情報か | どこで聞くか |
|---|---|---|
| 名前、メールアドレス、希望日時 | いいえ | 予約フォーム |
| 相談したいことの大まかな分類(仕事、家族、人間関係など) | 通常はいいえ | 予約フォーム(選択式にする) |
| 通院の有無、受診歴 | はい | 初回のセッションで、必要な場合に |
| 服薬の有無、薬の名前 | はい | 初回のセッションで、必要な場合に |
| 自由記述の「ご相談内容」 | 書かれた内容によっては該当する | 置くなら、病名や通院のことは書かなくてよいと添える |
同意と、利用目的の明示
要配慮個人情報は、原則としてあらかじめ本人の同意を得なければ取得できません(個人情報保護法 第20条第2項)。ただしガイドラインは、本人が書面や入力画面で直接提供した場合は、提供したことをもって同意があったものと解されるとしています。フォームに書いてもらうこと自体が違法になるわけではありません。
一方で、入力画面で本人から直接取得するときは、あらかじめ利用目的を明示する必要があります(同法 第21条第2項。ガイドラインは「ホームページの入力画面に入力した個人情報」を例に挙げています)。「ご記入の内容は、予約の管理と当日のカウンセリングの準備にのみ使います」のような一文を、送信ボタンの前に置きます。
漏えいしたときの重さが違う
聞く項目を減らしたほうがよい、いちばんの理由がここです。個人データが漏えいした場合、個人情報保護委員会への報告が義務になるのは、通常は本人の数が1,000人を超えるときなどに限られます。ところが要配慮個人情報を含む個人データは、人数にかかわらず報告の対象です(同法施行規則 第7条第1号)。
メールの誤送信、パソコンの紛失、共有設定を誤ったスプレッドシート。ひとりで運営していても起こりうる事故で、通院歴が入っていれば1人分でも報告が必要になります。そもそも予約の段階で持たなければ、この事故は起きません。
⚠️ ここに書いたのは個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)の要点で、法的な助言ではありません。
開業までの順番
3つの線引きを踏まえて、開業の準備を順番に並べると次のようになります。
| 順番 | やること | この記事との関係 |
|---|---|---|
| 1 | 対面・オンライン・自宅のどこで行うかを決める | — |
| 2 | 名乗り方と、扱う相談・扱わない相談を書き出す | 「心理師」の名称、医療との線引き |
| 3 | 通院中の方を受けるときの方針を決める | 主治医との関係 |
| 4 | 料金とキャンセルの条件を決める | キャンセルポリシーの書き方 |
| 5 | 予約フォームの項目を決め、利用目的の一文を置く | 要配慮個人情報を聞かない |
| 6 | オンラインで有料販売するなら、特定商取引法の表示を書く | 表示事項の一覧 |
| 7 | 税務署に開業届を出す | — |
| 8 | 予約ページを公開して、最初のお客様を迎える | 次の章 |
予約ページを作るときは、フォームの項目と、予約の情報がどこへ流れるかを一緒に確かめてください。予約システムによっては、フォームの内容がカレンダーの予定や通知メールにも写されるためです。
以下では、予約ページ・フォーム・事前決済・ビデオ会議URLの発行をまとめて扱えるツールの一例として、SailLab を取り上げます。
SailLab(セイルラボ)

SailLab は、予約ページ・受付フォーム・事前決済・ビデオ会議URLの発行を1つにまとめた国産の予約システムです。
- 受付フォームの項目を自分で決められます。選択式・チェックボックス・自由記述を使い分け、必須か任意かも項目ごとに設定できます
- Zoom・Google Meet・Teams のURLが予約確定時に自動で発行されます
- 予約時にカードで料金を受け取れます(Standard以上)
- リマインドメールと、お客様自身による日程変更・キャンセルに対応しています
1つ注意があります。SailLab では、予約フォームの「追加のメモ」欄に書かれた内容が、カレンダーの予定の説明欄にも入ります。カレンダーを他の人と共有している場合は、そこからも見えます。カウンセリングの予約では、この欄を使わないか、「病名や通院のことは書かなくて大丈夫です」と添えておいてください。また、集客の機能はありません。
| プラン | 月額(税抜) | カウンセリングの予約でできること |
|---|---|---|
| Free | ¥0 | 予約ページ、ビデオ会議URLの自動発行、リマインド |
| Light | ¥1,000 | 上記に加え、メール文面の編集、独自URL |
| Standard | ¥1,500 | 上記に加え、予約時の事前決済(SailLab の手数料3%) |
| Professional | ¥2,800 | Standard と同じ機能(SailLab の手数料0%) |
事前決済には、上の手数料とは別に Stripe の決済手数料がかかります(2026年9月時点。詳細は料金ページ)。ひとりでカウンセリングを受けていて、予約の連絡とURLの送付を手作業でしている方に向いたツールです。
最初のお客様をどこから迎えるか
これまでスキル販売のプラットフォームで受けていた方は、いきなり全部を移さないほうが安全です。新しいお客様はプラットフォーム経由で受け、2回目以降のお客様から自分の予約ページへ案内する形なら、収入を途切れさせずに移れます。プラットフォームの規約で外部への誘導が禁止されていないかは、先に確認してください。
手数料がどのくらい差になるかは、スキル販売サービスの手数料の記事で実額を計算しています。コーチングやオンライン相談の予約を受ける方向けの使い方は、コーチング向けの活用例にまとめています。
今日やることは1つです。いま使っている、または作ろうとしている予約フォームの項目を書き出し、要配慮個人情報にあたるものを消してください。
この記事の出典について
- 公認心理師法(第41条・第42条・第44条)と医師法(第17条)は、e-Govの法令データで2026年9月17日に確認した条文です
- 要配慮個人情報、取得時の同意、利用目的の明示、漏えい時の報告は、個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(同日確認)によります(出典: 個人情報保護委員会、2026年9月時点、対象は日本の個人情報取扱事業者)
- 冒頭の相談文は、Yahoo!知恵袋に公開されている質問(2023年)からの引用です
- SailLab の機能と料金は2026年9月時点のものです。法令の運用やプランの内容は変わります。判断の前に一次情報をご確認ください
予約ページは無料アカウントから作れます(クレジットカード登録は不要です)。
岡田 沙織 / SailLab 編集部
SailLab 編集部で、ひとりで事業を営む方や小さなチームに向けて、予約と日程調整のしくみづくりについて書いています。