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ChatGPTに個人情報を入れる前に:講師・コーチ・士業の線引き

6分で読める 田口 奈津子 田口 奈津子 / SailLab 編集部
ChatGPTに個人情報を入れる前に:講師・コーチ・士業の線引き

セッションが終わり、メモを開いて、ChatGPTに「この内容で次回の課題をまとめて」と頼む。そのメモに、相手の名前、勤務先、家族の事情が書かれていたら、貼り付けてよいでしょうか。

「ChatGPT 個人情報」で調べると、会社のIT担当者向けの記事が並びます。この記事は、一人ひとりの顧客の話を預かる講師、コーチ、カウンセラー、士業のために、どこで線を引くかをまとめます。個人情報保護委員会の注意喚起、仕事ごとの線引き、書き換え方とプロンプト、確かめる設定、守秘義務の順に見ていきます。

この記事の結論

顧客の情報をChatGPTに入れるときは、名前や連絡先、勤務先、日付など本人が分かる部分を外し、心身の状態や家族の事情は入れないのが基本です。個人情報保護委員会は、事業者が個人データを入力する場合、利用目的の範囲内か、学習に使われないかを確かめるよう求めています。守秘義務のある仕事では、設定にかかわらずその義務が優先します。

教室や相談業の運営全般は、サービスビジネス向けリソース集にまとめています。この記事は公的な資料の内容を紹介するもので、個別の事案の判断は含みません。

問題になるのは、誰のことか分かる文章

ChatGPTに文章を入れること自体が問題なのではありません。問題になるのは、その文章から特定の誰かが分かるときです。個人情報保護委員会は2023年6月、生成AIサービスを使う事業者に向けて、次の2点を注意点として示しました。

委員会が示した注意点一人で教室や相談業を営む人にとっての意味
個人情報を含むプロンプトを入力するときは、その個人情報の利用目的を達成するのに必要な範囲内か、十分に確認する顧客に伝えた利用目的(レッスンの運営、相談への対応など)に沿った使い方か
本人の同意なく個人データを入力し、それが応答の作成以外の目的で扱われる場合は、法律に違反する可能性がある。そのため、提供元が機械学習に使わないこと等を十分に確認する入れた内容が学習に使われない設定や環境で使っているか

あわせて委員会は、入力した個人情報が学習に使われ、不正確な内容で出力されるおそれがあることにも注意を促しています(出典: 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」、2026年10月3日確認)。いちばん確実なのは、誰のことか分からない形にしてから入れることです。そうすれば、2つの注意点のどちらにも悩まずに済みます。

仕事ごとの線引き

同じ「顧客の情報」でも、仕事によって重さが違います。心身の状態、病歴、家族の事情、お金の事情は、どの仕事でも入れないものとして扱うのが安全です。

仕事書き換えれば使えること入れないこと
講師・家庭教師習熟度、つまずいた単元、次回の課題生徒の氏名、学校名、成績表そのもの、家庭の事情
コーチ目標、取り組んだ行動、次回までの約束勤務先や上司の名前、健康や家族の話
カウンセラー一般的な支援の方法を調べること相談の内容、心身の状態、通院や服薬
士業条文や手続きの一般的な説明の下書き依頼者の氏名、案件の事実関係、書類の写し

通院歴や服薬などの情報は、個人情報保護法の「要配慮個人情報」に当たり、取得には原則として本人の同意が必要です。詳しくはカウンセラー開業の記事で整理しています。カウンセラーの欄に「相談の内容は入れない」と書いたのは、書き換えても話の中身から本人が分かることが多いからです。

貼り付ける前に書き換える

書き換えの基本は、名前、日付、場所、勤務先や学校、珍しい出来事の5つを外すことです。組み合わさると本人が分かる情報は、1つずつなら問題がなさそうに見えても外します。

元のメモ書き換えた形
山田花子さん(〇〇商事・営業課長)、10月2日のセッションAさん(会社員・管理職)、今回のセッション
来月の昇進面談で部長の佐藤さんに異動を相談したい近く上司との面談があり、担当の変更を相談したい
母親の介護で週2回は定時に帰る必要がある(入れない)

そのうえで、AIにも同じ扱いを頼みます。次のプロンプトは、〔 〕の中を書き換えて使えます。

あなたは〔コーチング〕のセッション後の振り返りを手伝うアシスタントです。
以下のメモは、本人が特定されないように書き換えてあります。
人物は「Aさん」と呼び、名前・会社名・地名・日付を推測して補わないでください。
メモ:
〔書き換えたメモを貼る〕
次の3つを作ってください。
1. 今回話した内容の要約(3行)
2. Aさんが次回までに取り組むこと(箇条書き3つ)
3. 次回のセッションで最初に確かめる質問(2つ)

返ってきた文章は、そのまま顧客に送らず、事実と違う部分がないかを確かめてから、名前を自分の手で戻します。名前を戻すのはAIの外で行うのがポイントです。

ChatGPTの設定で確かめる3つ

書き換えたうえで、設定も確かめておきます。OpenAIのプライバシー設定のページでは、次の機能が案内されています。

設定何が変わるか
モデルの改善自分のチャット内容を、モデルの改善に使うかどうかを選べる。顧客の話を扱うならオフにする
一時チャット履歴に残らず、新しいメモリが作られず、モデルの改善にも使われない
メモリ保存された内容を確認、更新、削除でき、機能自体をオフにもできる

(出典: OpenAI「ChatGPT のプライバシー設定」、2026年10月3日確認)。顧客に関する作業は一時チャットで行い、終わったらメモリに顧客のことが残っていないかを確かめる習慣をつけておくと安心です。設定はサービスの更新で変わることがあるため、ときどき見直します。

守秘義務のある仕事は、設定より義務が先

士業や心理職の多くには、法律で秘密を守る義務があります。たとえば公認心理師法は、正当な理由なく、業務で知った人の秘密を漏らしてはならないと定め、公認心理師でなくなった後も同じとしています。違反すると1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(出典: 公認心理師法 第41条・第46条、2026年10月3日確認)。

こうした義務は、AIの設定がどうなっているかとは別にかかります。学習に使われない設定にしていても、依頼者や相談者の秘密を外部のサービスに入れてよいかは、その職業のルールで判断する必要があります。所属する団体がAIの利用について指針を出している場合は、それに従います。

貼り付ける前の5つの確認

  1. 名前、日付、場所、勤務先や学校を外したか
  2. 心身の状態、家族やお金の事情が残っていないか
  3. 一時チャットか、モデルの改善をオフにした状態か
  4. 返ってきた文章を自分で確かめてから使うか
  5. 守秘義務のある仕事なら、その職業のルールで許されるか

コーチングを仕事にするときの準備全体はコーチングで独立する記事、予約フォームで何を聞くかは予約フォームの作り方で紹介しています。

田口 奈津子

田口 奈津子 / SailLab 編集部

SailLab 編集部で、予約受付・事前決済・無断キャンセル対策や、教室とレッスンの運営など、対面とオンラインでサービスを提供する事業者向けの記事を担当しています。

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