「お客さんができない」。コーチングで起業した人の悩みとして、いちばん多く書かれている言葉です。コーチを育成する側の解説でも、よくある失敗として「集客に苦戦する」「資格を得て満足している」が挙がっています。
起業の解説記事の多くは、資格の要否と集客のコツで終わります。ただ、実際にお金をいただく段階で困るのは、その先です。何を、いくらで、どんな約束で売り、代金をいつ受け取るか。この記事では、体験セッションから継続コースまでの売り方、契約に書くこと、予約と支払いの準備を、最初の90日の順番で整理します。
この記事の結論
コーチングで起業するのに資格は要りません。先に決めるのは、体験セッションから継続コースへ進む売り方と、継続コースの代金を先に受け取る形です。コーチングは特商法の特定継続的役務に含まれませんが、語学を教える英語コーチングは語学教室に当たる可能性があり、2か月超・5万円超なら書面の交付とクーリング・オフの対象になります。
目次
ひとりで事業を始める人向けの記事は、個人・小規模チーム向けリソース集にまとめています。
資格は要らない。確かめるのは医療と語学との境目
コーチとして仕事をするのに、国家資格や届出は必要ありません。民間のコーチ資格は技能を示す材料にはなりますが、なくても開業できます。確かめておきたいのは、資格よりもほかの仕事との境目です。
1つ目は医療との境目です。気分の落ち込みや不眠の相談を受けたとき、診断や治療に踏み込むのは医師の仕事です。コーチは話を聴き、目標に向けた行動を一緒に考える立場にとどまります。この線引きはカウンセラー開業の記事で条文とあわせて確認しています。セッションの記録をAIで整理するときに外すべき情報はChatGPTに個人情報を入れる前の記事にまとめています。
2つ目は語学との境目です。特定商取引法は、長期の契約でトラブルが起きやすい7つのサービスを「特定継続的役務」として定めています。エステ、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介で、コーチングは入っていません(出典: 消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供Q&A」、2026年9月26日確認、対象は日本の制度)。
ただし、英語コーチングのように語学そのものを教える内容を含む場合は、「語学教室」に当たる可能性があります。語学教室は、期間が2か月を超え、金額が5万円を超える契約が対象です。インターネットで提供する場合も含まれます。当たる場合は、契約前と契約時の2回の書面交付、8日間のクーリング・オフ、中途解約のときの違約金の上限が決まっています。学習習慣づくりだけか、語学も教えるのか。コースの中身を説明するときに、はっきりさせておきます。
売るものは、体験セッションと継続コースの2つから
最初のメニューは2つで足ります。相性を確かめる体験セッションと、成果まで伴走する継続コースです。単発のセッションだけを並べると、お客様は毎回「次も申し込むか」を考えることになり、続きません。
| メニュー | 役割 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 体験セッション | 相性と、目標の言葉を確かめる | 時間、料金、継続コースの案内の仕方 |
| 継続コース | 成果まで伴走する | 期間、回数、料金、日程変更と解約のルール |
体験セッションを無料にするか有料にするかは、どちらでも構いません。有料にするなら、予約の時点で支払ってもらう形にしておくと、当日になって現れないことへの備えにもなります。金額は、継続コースの1回分より安くしておくと比べやすくなります。カウンセリングの相談室が初回(インテーク)にいくら、何分をあてているかは、インテーク面接の記事で13か所の公開料金を数えています。
月にいくつ体験セッションが必要かを計算する
目標の収入から逆算すると、集客の目標がはっきりします。計算式は次のとおりです。
月に必要な体験セッションの数 = 目標の月収 ÷ 1人あたりの月額 ÷ 継続の月数 ÷ 申し込みの割合
たとえば、3か月・隔週6回・6万円の継続コースで月20万円を目指すとします。1人あたり月2万円なので、同時に10人のお客様が必要です。1人が3か月で卒業するなら、毎月3〜4人の新しいお客様が要ります。体験セッションから3人に1人が申し込むと仮定すると、体験セッションは月に10回必要です。
申し込みの割合は人によって大きく違うため、ここは仮の数字です。自分の最初の10回の体験セッションで実際の割合を数え、式に入れ直してください。なお、この例の「3か月・6万円」は、英語を教える内容を含むなら特定継続的役務の基準を超える金額と期間です。
継続コースの約束は、申し込みの前に文章にする
継続コースでトラブルになるのは、ほとんどが途中の変更と解約です。申し込みの前に、次の項目を文章にして見せておきます。
| 項目 | 書いておく内容 |
|---|---|
| 期間と回数 | 何か月で何回か。使い切れなかった回をどう扱うか |
| 日程の変更 | 何時間前まで変更できるか。当日の変更をどう数えるか |
| 中途解約 | 残りの回数分をどう返金するか。差し引く額はいくらか |
| 支払い | 一括か分割か。いつまでに払うか |
解約のときに差し引く額は、自由に決められるわけではありません。消費者契約法第9条は、解約に伴う違約金のうち、事業者に通常生じる「平均的な損害」を超える部分を無効としています。「途中で解約しても一切返金しません」と書いても、その通りにはならない可能性があるということです。返金額は、残りの回数から計算できる形で書いておくと、説明もしやすくなります。
ウェブサイトで申し込みを受けるなら、特定商取引法にもとづく表示も必要です。表示する項目と、省略できないものはオンライン講座・レッスンのやり方でまとめています。
予約と支払いを、最初のお客様の前に整える
体験セッションの申し込みが入ってから慌てて準備すると、日程調整のメールだけで数往復かかります。最初のお客様の前に、次の5つを整えておきます。
- 体験セッションの予約ページ。空いている時間から相手が選べるようにする
- 申し込み時の質問。いまの状況と、相談したいことを先に書いてもらう
- 継続コースの代金を先に受け取る方法。カード決済か、回数分の前払い
- 日程変更の期限。何時間前まで変更できるかを予約ページで守らせる
- ビデオ会議のURLとリマインド。予約ごとに自動で送る
以下では、この5つを1つで満たすツールの一例として、SailLab を取り上げます。
SailLab(セイルラボ)

SailLab は、予約ページ・受付フォーム・事前決済・ビデオ会議URLの発行を1つにまとめた国産の予約システムです。
- 体験セッションと継続コースで、別々の予約ページを作れる
- 予約フォームに質問を追加し、セッション前に相談内容を受け取れる
- 予約の時点でカード決済を受け付けられる。回数分を前払いのポイントとして販売し、予約ごとに使ってもらうこともできる。ポイントには有効期限を付けられる
- キャンセルや日程変更を受け付ける期限を設定でき、お客様はメールのリンクから自分で変更できる
- Zoom・Google Meet・Microsoft TeamsのURLを予約ごとに発行し、確認とリマインドのメールを自動で送る
できないことも書いておきます。毎週同じ枠を自動で繰り返し予約する機能と、毎月の定額を自動で請求する機能はありません。継続コースは、回数分のポイントを先に購入してもらうか、1回ごとに支払ってもらう形になります。返金は、決済ごとに手動で行います。料金は料金ページで確認できます。
体験セッションの受け方をもっと詳しく決めたい場合は、コーチング向けの予約システムの記事で、メニューが増えたときの予約ページの分け方を扱っています。LPやメール配信まで1つのツールにまとめる場合の費用は、UTAGEの料金の記事で比べています。
最初の90日の進め方
集客の方法を増やす前に、売り方と約束を先に固めます。順番は次のとおりです。
- 1か月目:体験セッションと継続コースの2つを決める。料金、期間、回数、日程変更と解約のルールを文章にします。英語を教える内容があるかも、ここで確かめます
- 2か月目:予約ページを公開し、体験セッションを10回行う。知人の紹介やSNSから、まずは体験セッションに来てもらいます。何人が継続コースに進んだかを数えます
- 3か月目:数えた割合で計算し直す。月に必要な体験セッションの数が分かれば、集客に使う時間も決まります
同じように、ひとりで始める仕事の手順はカウンセラーの開業、キャリアコンサルタントの独立、フリーランスの日本語教師の記事でも扱っています。コーチの予約の受け方の例は、コーチ向けのページで紹介しています。経営者を相手に相談を受ける仕事については、中小企業診断士の独立の記事で、公的な仕事と民間の仕事の報酬の差を調査の数字から見ています。
体験セッションの予約ページを1つ作ってみる場合は、無料アカウントから作成できます。クレジットカード登録は不要です。
岡田 沙織 / SailLab 編集部
SailLab 編集部で、ひとりで事業を営む方や小さなチームに向けて、予約と日程調整のしくみづくりや、Googleカレンダー・Excelなど手元のツールの使い方とその限界について書いています。