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中小企業診断士の独立、公的な仕事と民間の仕事で日当は約3倍違う

14分で読める 中村 遼 中村 遼 / SailLab 編集部
中小企業診断士の独立、公的な仕事と民間の仕事で日当は約3倍違う

「独立した中小企業診断士の約3割は売上1,000万円超」という数字は、診断士の独立を調べるとよく目にします。2026年5月に日本中小企業診断士協会連合会が公表した最新の調査でも、売上1,001万円以上の人は31.4%でした。[1]ただし、この集計の対象は、診断士の仕事を年に100日以上行っている人だけです。同じ集計で、売上500万円以下の人も31.5%います。

独立した後の売上を分けるのは、資格そのものより、どんな仕事で予定を埋めるかです。同じ調査では、支援機関などから回ってくる公的な仕事と、企業と直接契約する民間の仕事で、1日あたりの報酬に約3倍の差がありました。この記事では、その調査を中心に、独立の現状、手続き、公的な仕事と民間の仕事の違い、1年目の動き方、民間の相談を受ける窓口の作り方へと順に進みます。

この記事の結論

中小企業診断士の独立では、最初は支援機関や県協会からの紹介による公的な仕事で予定を埋める人が多い一方、その1日の報酬は民間の仕事の約3分の1です。2026年の調査でプロコン診断士は58.9%、勤め先が副業を認める割合も79.1%に増えました。副業のうちに民間の相談を受ける窓口を作り、紹介された経営者が初回相談を申し込める形を整えてから独立します。

1人で相談の仕事を始めるときの考え方は、個人・少人数チーム向けリソース集にまとめています。この記事は公表されている資料と法令の内容を紹介するもので、個別の判断についての助言ではありません。

独立している診断士はいま何割か

日本中小企業診断士協会連合会は、都道府県協会に所属する会員を対象に、診断士の活動状況の調査を数年おきに行っています。2026年5月に公表された結果は、2025年11月時点の調査で、1,847人が回答しました。[1]独立を考える人にとって、いちばん新しい公開データです。

6割近くがプロコン

回答者のうち、コンサルティングを本業にする「プロコン診断士」は58.9%で、企業などに勤める「企業内診断士」は37.4%でした。[1]独立してからの年数は、1年以内が8.3%、2〜5年が19.6%、5〜10年が13.3%、10年以上が17.7%です。

独立していない人のうち、2年以内に独立したい人は7.5%、5年以内は8.6%、10年以内は7.6%で、合わせて23.7%が独立の意向を持っています。[1]独立する予定がない人は15.8%なので、まだ独立していない人の6割は、いずれ独立したいと考えていることになります。会員の調査なので、協会に入っていない診断士の実態とは違う可能性がある点は、数字を読むときに意識しておきます。

副業を認める会社が増えた

企業内診断士に勤め先の副業の扱いを聞くと、「全面的に認められている」と「一部認められている(許可制等)」の合計が79.1%で、2021年の前回調査の47.0%から大きく増えました。[1]コンサルティングの仕事を行っている人も、前回の65.7%から74.7%に増えています。

勤めながら小さく仕事を受け、手応えを確かめてから独立する、という道が、5年前よりずっと取りやすくなっています。独立の判断を、副業の実績を見てから下せるということです。

独立しない人の理由

独立する予定がないと答えた人の理由(複数回答)は、「仕事の内容や職場環境に満足している」が20.7%、「収入が低下すると見込まれる」が18.8%、「収入が安定しない」が18.5%、「受注機会の確保が難しい」が17.9%、「能力不足を感じている」が17.0%でした。[1]

収入の見込みと、仕事を取れるかどうかへの不安が、独立をためらう理由の中心です。どちらも、後で見る公的な仕事と民間の仕事の組み合わせ方で、ある程度は見通しを立てられます。その前に、登録と開業の手続きを確かめます。

登録の更新と、開業の手続き

独立した後も診断士として活動を続けるには、5年ごとに登録を更新する必要があります。更新の要件は、独立した後の仕事の組み立て方にも関わります。

5年ごとの更新と、実務の30点

「中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則」は、登録の有効期間を登録の日から5年と定めています(第8条)。更新するには、その5年の間に、理論政策更新研修の修了などを合計5回以上行うこと、そして実務の従事などを1日1点として合計30点以上にすることが必要です(第10条)。[2]

2026年の調査では、実務の従事のポイントを「本業(コンサルティング業務等)で取得可能」と答えた人が62.4%でした。[1]独立すれば、ふだんの仕事がそのまま更新の要件を満たすことになります。一方で、企業内診断士のうち「阻害要因がある」と答えた人は22.0%で、その理由の1位は「実務従事の機会がない」でした。

退職と開業届のタイミング

個人で独立するなら、税務署に開業届を出し、青色申告にするなら承認の申請もします。届出の期限は記事によって説明が違うため、国税庁の案内で確かめておきます。期限の読み方を整理した記事としてはピラティス開業の記事があります。

退職と開業の順番にも注意が要ります。独立7年目の診断士のtakanaka_tencyさんは、退職より前に開業届を出し、雇用保険のことを忘れていたため「結局受給せずに終わってしまいました」と振り返り、雇用保険の手当を意識して開業することを勧めています。[3]手当を受けられる条件は人によって違うので、退職の前にハローワークで確かめます。

独占業務がないこと

中小企業診断士には、税理士の税務代理のような独占業務がありません。そのため、仕事の範囲は広く取れる一方で、税金の個別の計算や法律の個別の判断など、他の資格者に限られた仕事には踏み込まないよう注意します。相談の中でどこに線があるかは、FPの独立の記事で法律ごとに整理しています。手続きを確かめたら、独立後の仕事の中身を見ます。

公的な仕事と民間の仕事

独立した診断士の仕事は、国や都道府県、商工会議所などの支援機関から受ける公的な仕事と、企業と直接契約する民間の仕事に分かれます。2026年の調査では、売上に占める割合が「公的業務が高い」人が34.9%、「民間業務が高い」人が31.1%で、ほぼ拮抗しています。[1]

仕事のきっかけ

コンサルティングの依頼を受けたきっかけで、最も多いもの(1位)は次のとおりでした。[1]

依頼のきっかけ(1位)割合
中小企業支援機関・商工団体等からの紹介20.1%
県協会からの紹介15.9%
相談窓口9.5%
他の中小企業診断士からの紹介8.7%
ユーザー企業からの直接依頼(ウェブサイト、SNS等)8.5%
現在や過去の支援企業からの紹介8.2%
金融機関からの紹介6.7%

上位の2つと相談窓口を合わせると45.5%で、仕事の入り口の半分近くが公的な機関とのつながりから来ています。専門家として登録している先も、商工会・商工会議所が37.1%、都道府県が24.9%と多く、専門家の登録をしていない人は20.0%でした。[1]

1日の報酬の差

年に100日以上診断士の仕事をしている人の報酬を、公的な仕事が中心の人と、民間の仕事が中心の人に分けると、次のとおりです。[1]

1日あたりの平均額公的な仕事が中心民間の仕事が中心
経営支援業務4万3,300円11万9,400円
診断業務3万9,400円10万7,200円
講演・教育訓練業務4万3,800円11万5,200円

経営支援業務で比べると、民間の仕事が中心の人の日当は、公的な仕事が中心の人の約2.8倍です。調査の報告自身も、両者の金額に「3倍近くの開き」があるとしています。[1]公的な仕事は仕事が回ってきやすい分、1日あたりの報酬は低く抑えられているということです。

顧問契約の差

顧問契約でも差ははっきりしています。公的な仕事が中心の人で顧問契約を結んでいるのは20.6%、顧問先は平均2.4社、顧問料は月額平均7万5,600円でした。民間の仕事が中心の人では53.5%が顧問契約を結び、顧問先は平均6.2社、顧問料は月額平均15万900円です。[1]

平均の顧問先数と顧問料を掛けると、民間が中心の人は顧問契約だけで月に約94万円、公的が中心の人は約18万円になります。平均どうしを掛けた目安ですが、安定した収入の柱になるのは、民間の顧問契約だと分かります。

売上の分布

年に100日以上診断士の仕事をしている人の、診断士業務の年間売上は次のとおりです(564人)。[1]

年間売上割合
500万円以下31.5%
501〜800万円20.2%
801〜1,000万円16.0%
1,001〜1,500万円16.5%
1,501万円以上14.9%

冒頭の「約3割が1,000万円超」は、この表の下2段の合計です。年に100日に満たない人はこの集計に入っていないので、独立したばかりの人の売上を見積もるときに、この数字をそのまま使うのは楽観的すぎます。では、1年目にどう動けばよいか。開業した診断士の記録から見ていきます。

1年目の動き方

公的な仕事は入り口になりやすく、民間の仕事は単価が高い。この2つをどう組み合わせるかが、1年目の動き方の中心です。

公的な仕事で足場を作る

2025年6月に独立した診断士の内山さんは、独立から半年の記録をnoteに書いています。独立した直後は収入への不安が大きく、公的な経営支援機関の経営相談員の公募に積極的に応募したところ、「独立から1か月ほどで、週3〜4日は定期的な仕事がある状態をつくることができました」といいます。[4]

一方で内山さんは、大変だったこととして「働けなければ収入が止まり、会社員のような保障もない」と書き、今後については「企業との直接契約はまだまだこれからです」としています。[4]公的な仕事で生活の足場を作り、その上で民間の仕事を増やしていくという順番が、半年の記録からも読み取れます。

内山さんは、独立前にやっておくといいこととして、「副業として、小さくでも仕事を受けてみること」「生活コストと、最低限必要な収入を把握しておくこと」などを挙げています。[4]公的な仕事の日当が4万円台なら、毎月の生活費と事業の経費を何日分の仕事で賄えるかを、独立の前に計算しておけます。

民間の仕事は紹介と専門から

独立7年目のtakanaka_tencyさんは、「資格をアピールして個人で営業を行ってもそれだけで仕事に直結するとは言い難いです」と書き、営業の結論として、紹介されやすい強みを作ること、相互に売り込み合える仲間の診断士を作ること、民間の契約もまず人間関係作りから始めることを挙げています。[3]独立して良かったこととしては、「収入の柱が複数生まれるので、案外将来についても安心感がある」と書いています。

2026年の調査で、診断士が挙げた専門分野(1位)は、経営企画・戦略立案が28.4%、財務が12.2%、販売・マーケティングが12.1%でした。[1]多くの人が同じ分野を名乗る中で、業種や課題を絞った専門は、紹介する側にとって説明しやすい強みになります。

資格だけでは仕事にならない

診断士以外に持っている資格は、ファイナンシャルプランナーが20.5%、情報処理技術者が16.0%、宅地建物取引士が11.0%、MBAが10.3%でした。[1]takanaka_tencyさんも、診断士としてよりITの専門家としての関心が多く寄せられていると書いています。[3]

経営支援や診断のほかに、講演・研修や執筆も診断士の仕事です。調査では、昨年1年間に行った日数の平均が、経営支援業務81.8日、診断業務41.2日、講演・教育訓練業務19.3日、執筆業務21.8日でした(それぞれ行った人の平均)。[1]講演や執筆は、それ自体の報酬に加えて、聞いた人や読んだ人から相談が来る入り口にもなります。

前の職場で積んだ専門と、診断士としての経営全体の見方を組み合わせることが、紹介される理由になります。紹介で知った経営者が、次にどこから相談を申し込むか。その窓口を見ていきます。

民間の初回相談を受ける窓口

民間の仕事の多くは、紹介を受けた経営者が「一度話を聞いてみたい」と連絡してくるところから始まります。紹介から初回相談までの距離が短いほど、民間の仕事に変わりやすくなります。

直接の依頼は8.5%

先の表で、ウェブサイトやSNSからの直接依頼を1位に挙げた人は8.5%でした。[1]ホームページを作れば依頼が来る、という形ではなく、紹介や講演で知った経営者が後でホームページを見て、そこから相談を申し込む、という流れが現実的です。ホームページ作成サービスで予約まで受ける場合の費用は、ペライチの料金の記事で比べています。

その流れの最後で、問い合わせのフォームから日程の調整に何往復もかかると、忙しい経営者は途中で離れてしまいます。紹介した支援機関の担当者や他の診断士にとっても、「このページから日時を選んで申し込んでください」と伝えられる窓口があるほうが紹介しやすくなります。

初回相談で聞くこと

  • 業種、従業員の人数、この3年の売上の動き
  • いちばん手を打ちたい課題(売上、資金繰り、人材、事業承継など)
  • これまでに支援機関や専門家に相談したことがあるか
  • 補助金や融資の予定があるか
  • 誰からの紹介か

紹介元を聞いておくと、お礼の連絡ができ、紹介の関係が続きます。売上の動きと課題が分かれば、初回の相談で、スポットの支援で済むか、継続の支援が必要かの見立てを伝えられます。

スポットから顧問へ

調査では、コンサルティングの形態として「経営全般に関する長期的な支援」が22.2%、「単発スポット支援」が13.4%でした。[1]初回の相談をきっかけに、まず期間を決めたスポットの支援を受けてもらい、その成果を見て月1〜2回の定例の顧問契約に移る、という順番は、相手にとっても判断しやすい形です。

初回の相談を有料にするか無料にするかは、紹介の経路で分ける方法もあります。支援機関や仲間からの紹介は無料、ホームページからの直接の申し込みは有料とすれば、紹介元の顔を立てつつ、相談だけで終わる申し込みを減らせます。次は、この窓口をどう形にするかです。

相談を申し込みやすくする仕組み

紹介された経営者が、その日のうちに空いている日時を選んで申し込めるようにしておくと、紹介から初回相談までの距離が縮まります。経営者の側から見て、何があれば申し込みやすいかを挙げます。

経営者が申し込みやすい窓口

  • 支援機関での相談日や企業訪問の予定と重ならない時間だけが選べる
  • 業種や課題、紹介元を、申し込みの画面で書ける
  • 有料の相談なら、申し込みと同時にカードで支払える
  • オンラインで話せるリンクと、前日のお知らせが届く

SailLab(セイルラボ)

以下では、こうした窓口を作れるツールの一例として、SailLab を取り上げます。

中小企業診断士の経営の初回相談の予約ページで、60分のオンライン相談の日時を選ぶ画面

SailLab は、予約ページ・カレンダー連携・事前決済・リマインドメールを1つにまとめた国産の予約システムです。

  • GoogleカレンダーやMicrosoftのカレンダーと連携し、予定のある時間は予約を受けません
  • 予約ページごとに受付フォームを付け、業種や課題、紹介元を相談の前に聞けます
  • 予約と同時にカードで相談料を受け取れます。入金は自分のStripeアカウントに直接入ります
  • ZoomやGoogle Meet、TeamsのURLを予約ごとに発行し、確認とリマインドのメールを自動で送ります

紹介用の無料の初回相談のページと、直接申し込み用の有料のページを分けて作ることもできます。カード決済にはStripeの手数料3.6%がかかり、SailLab の手数料はプランによって0%または3%です。料金は料金ページで確認できます。

できないこと

できないことも書いておきます。月額の顧問料を顧問先から自動で毎月受け取る機能はありません。SailLab で受け取れるのは、予約ごとの相談料です。顧問契約の料金は、請求書などで別に受け取ります。

支援機関から派遣される公的な仕事は、機関の側で日程や手続きが決まるため、SailLab で受け付けるものではありません。補助金の申請書づくりや、案件の管理の機能もなく、通知はメールだけで、LINEには対応していません。最後に、独立を決める前にやっておくことを1つに絞ります。

独立を決める前に、1つだけやっておくこと

勤め先が副業を認めているなら、独立する前に、民間の初回相談を受ける窓口を1つ作り、紹介をくれそうな3人に知らせることです。公的な仕事は独立した後でも公募に応募できますが、民間の仕事は、紹介と信頼が積み重なるまでに時間がかかります。副業の間に民間の相談が月に何件来るかを見れば、独立した後の売上を、「約3割が1,000万円超」という数字より確かに見積もれます。

1人で相談の仕事を始める全体像はコーチングで開業する記事、相談料をカードで受け取るときの手数料は決済サービスの手数料を比べた記事も参考になります。初回相談の窓口を先に作っておく場合は、無料アカウントから作成できます。クレジットカード登録は不要です。

参考資料

  1. 日本中小企業診断士協会連合会「「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果について」令和8年5月。調査時点2025年11月、会員中小企業診断士1,847人が回答(2026年10月7日確認)
  2. e-Gov法令検索「中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則」第8条、第10条(2026年10月7日確認)
  3. takanaka_tency(独立7年目の中小企業診断士)「中小企業診断士 独立1年目の仕事の取り方・営業活動を振り返る」note、2022年5月2日
  4. QCC(TAC名古屋中小企業診断士試験合格者コミュニティ)内山「駆け出し中小企業診断士、独立から半年の記録~リアルな仕事と現在地~」note、2026年1月6日
中村 遼

中村 遼 / SailLab 編集部

SailLab 編集部で、営業・採用の日程調整、面接や説明会の受付、士業やコンサルタントの相談の受け方についての記事を担当しています。

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