人事院が公表した自営兼業のQ&Aには、新しく承認できるようになった事業の典型例として、ハンドメイド品の販売や自費出版と並んで「スポーツや芸術の教室を開催して自ら指導を行うこと」が挙げられています。[1]2026年4月から、国家公務員も、週末に自分の教室を開くことを承認を受けて始められるようになりました。ただし、承認の基準には、回数と時間の数字がはっきり書かれています。
この記事は、スポーツ、音楽、絵、語学などの技能を持つ公務員が、週末に教室やレッスンを開くことを考えたときに読むためのものです。何が変わったか、承認の3つの基準、年20万円と月30時間を教室の回数に直した数字、承認を受けやすい教室の形、申請の順番、地方公務員の場合、事業計画を予約ページに写す方法まで、始める順に追っていきます。
この記事の結論
2026年4月から、国家公務員もスポーツや芸術の教室のような「知識・技能をいかした事業」を、承認を受けて自分で営めるようになりました。原則は週休日だけ、時間は週8時間・月30時間が目安で、承認の期限は2年までです。1回3,000円のレッスンなら、週2回で年20万円の目安を超えます。地方公務員は、自治体ごとの許可基準によります。
2026年4月に何が変わったか
国家公務員法第103条は、職員が自ら営利企業を営むことを禁じ、承認を得た場合だけを例外としています。[2]この「承認を得れば自分で事業を営める」という枠そのものは昔からありました。変わったのは、承認できる事業の範囲です。
これまで承認できたのは、資産と家業だけ
見直しの前に承認できた自営は、不動産や駐車場の賃貸、太陽光発電の電気の販売、家業として継いだ農業などに限られていました。どれも、資産を運用する性格が強いか、家の財産を守る必要があるものです。自分の技能を売る事業は、承認の対象に入っていませんでした。[1]
人事院の報告によると、職員アンケートでは、今後兼業をしたいと考える職員が3割を超え、その内容は自分の趣味や特技をいかした活動と、社会貢献につながる活動が上位でした。[3]見直しは、この声を受けたものです。
新しく加わった2つの事業
人事院は2025年12月19日、自営兼業の承認基準を新しく設け、2026年4月1日から施行すると発表しました。[4]新しく承認できるようになったのは、次の2つです。
| 事業 | 人事院が挙げる例 |
|---|---|
| 職員の有する知識・技能をいかした事業 | ハンドメイド品の販売、スポーツや芸術の教室 |
| 社会貢献に資する事業 | 地域振興イベントの主催、高齢者向けの買物代行 |
あわせて、不動産の賃貸と太陽光発電は、承認が要る規模の線が引き上げられました。[3]この記事では、教室やレッスンにあたる1つ目の事業を扱います。
教室は「典型例」だが、自動では通らない
Q&Aは、知識・技能をいかした兼業の典型例として、自作の作品をインターネットなどで売ること、スポーツや芸術の教室で自ら指導すること、自費出版を挙げています。[1]教室は、制度が想定している形の真ん中にあります。
それでも、当てはまる事業なら必ず承認される、というものではありません。承認するかどうかは、事業計画書をもとに、所属する府省が基準に照らして1件ずつ判断します。[1]では、その基準は何か。
承認の3つの基準
新しい承認基準は、3つの判断要素と、事業の中身を確かめるための書類の要件でできています。[3]教室を開く人にとって、それぞれ何を意味するかを見ます。
仕事との利害関係がないこと
1つ目は、自分の官職と事業との間に、特別な利害関係やそのおそれがないことです。Q&Aは、事業に対して許認可や補助金の交付を職務として行う立場にある場合や、所属する組織と物品購入などの契約関係が生じる場合を例に挙げています。[1]
たとえば、スポーツ施設の補助金を担当する職員が、その補助金の対象になる施設で教室を開くような形は、ここで止まります。教える内容と仕事の担当が離れているほど、この基準は問題になりにくくなります。
職務に支障がないこと:週休日が原則
2つ目は、本業の職務に支障が生じないことが明らかであることです。Q&Aは、承認できるのは原則として兼業を行う日時が週休日だけで、休日にも疲労回復の時間が確保される場合だとしています。勤務日の勤務時間外に行えるのは、やむを得ない場合の例外です。[1]
時間の目安は、原則として週8時間または1か月30時間、勤務日には1日3時間までです。そして、年次休暇を取ることを前提に計画した自営兼業は、承認は困難とされています。[1]平日の昼に講座を入れて有給休暇で回す、という計画は、最初から通りません。
公正性と信頼を損なわないこと
3つ目は、公務の公正性と信頼性の確保に支障が生じないことです。Q&Aは、所属組織の仕事にきわめて近い事業、もっぱら職務で得た知識を使う事業、利害関係者が客になる事業、料金の単価が同種の事例を大きく上回る事業などを、支障が生じうる例に挙げています。[1]
承認にあたって、事業で職員の肩書きを使わないこと、定期的に事業の状況を報告すること、確定申告書の写しを出すことなどの条件が付く場合もあります。[1]教室の紹介文に「○○省職員が教える」と書くような宣伝は、避けるのが前提です。基準がわかったところで、教室の回数と時間に直してみます。
教室の数字で考える
承認の基準には、収入と時間の数字が出てきます。この2つを、1回いくらのレッスンを週に何回、という形に直すと、自分の計画がどこに当たるかが見えます。ここからの計算は、Q&Aの目安をもとに筆者が行ったものです。
「自営」になる線:年20万円
そもそも承認が要る「自営」にあたるかは、営利目的、継続性、規模、店舗などの設備の有無を見て個別に判断されます。Q&Aは規模の目安として、経費を差し引く前の収入の見込みが年20万円を超える場合には「自営」と判断しうる、としています。[1]
この20万円は、経費を引く前の売上です。教室の場所代や道具代を引いた所得ではありません。また、自分で教室の場所を構えて屋号を掲げるような場合は、収入の見込みを待たずに「自営」と判断されることもあります。[1]
1回3,000円なら、週2回で超える
年20万円を、1回のレッスン料に直すと次のようになります。年52週、休まず続けた場合の計算です。
| 1回の料金 | 週1回 | 週2回 | 20万円を超える回数 |
|---|---|---|---|
| 2,000円 | 年10.4万円 | 年20.8万円 | 年101回 |
| 3,000円 | 年15.6万円 | 年31.2万円 | 年67回 |
| 5,000円 | 年26万円 | 年52万円 | 年41回 |
1回3,000円の個人レッスンなら、週1回では届かず、週2回で超えます。グループレッスンで1回に3人を教えれば、週1回でも超えます。教室として続けるつもりなら、ほとんどの計画は「自営」の側に入ると考えて、始める前に承認を受けるのが安全です。
月30時間は、週末が5回ある月に効く
時間の目安は「週8時間」と「月30時間」の2つです。週末が4回の月なら、週8時間でも月32時間で、月30時間とほぼ同じです。ところが、土日が5回ある月は、週8時間ずつ使うと月40時間になり、月30時間の目安を大きく超えます。
土日が5回ある月でも30時間に収めるなら、1回の週末に使えるのは6時間までです。レッスンの準備や連絡、片づけも事業の時間に含めて考えると、レッスンそのものは週末に4〜5時間ほどに収めておくと余裕が残ります。たとえば、土曜の午前に60分のレッスンを2コマ、日曜の午前に2コマ、という組み方です。数字の次は、教室の形です。
承認を受けやすい教室の形
同じ「教える」仕事でも、どういう形で営むかで、承認の対象になるかが変わります。Q&Aには、教室を開く人が見落としやすい線がいくつか書かれています。
アプリに登録して教えるだけの形は、想定されていない
Q&Aは、知識・技能をいかした兼業の趣旨から、アプリなどに登録して、定型化されたサービスを個人として提供するような形の事業は、今回の見直しで承認できる事業としては想定していないとしています。安く仕入れたものをそのまま高く売る事業も同じです。[1]
決まった形のサービスを、仲介サービスに登録して受けるだけの働き方は、自分の知識や技能を事業として発揮する形とは見なされにくい、ということです。どのサービスがこれにあたるかは書かれていないため、仲介サービスを使う予定があるなら、計画の段階で担当者に確かめます。
自分の名前で、自分の教室として開く
Q&Aは、「自営」は個人の名義で、広く消費者を相手に事業を営む場合が対象だとしています。[1]教室の名前、教える内容、料金、日時、申し込みの受け方を自分で決め、自分の名前で受ける形が、制度の想定している形です。
人を雇って教室を広げることも直ちに否定はされませんが、雇う側の責任が生じるぶん職務への影響があると判断されやすくなり、もっぱら他人が教える形になれば、そもそも対象外です。[1]1人で、自分が教える規模から始めるのが基本になります。
場所:宿舎ではできない
教室を開く場所にも注意が要ります。Q&Aは、国家公務員宿舎の中で自営兼業を行うことはできないとしています。開業届や事業計画書に書く事業所は、宿舎以外の場所にする必要があります。[1]
宿舎に住んでいる人は、地域の公民館や貸しスタジオを借りるか、オンラインで教える形を考えます。場所を借りる手続きが勤務日にしかできない場合に限って勤務日の対応が例外として認められる、という例もQ&Aに挙げられています。[1]形が決まったら、申請の段取りです。
承認を受ける段取り
自営兼業の承認は、事業を始める前に受けるものです。承認を受けずに始めると、懲戒処分の対象になりうるだけでなく、国家公務員法の罰則(1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)にあたる場合があります。[1]順番を間違えないことが、何より大切です。
最初に、所属府省の担当者に相談する
Q&Aは、承認申請書の下書きと事業計画書の案を作ったうえで、各府省の担当者に事前に相談するよう求めています。[1]府省によっては、その府省の仕事に照らして承認が難しい業種を内規で示していたり、「自営」にあたらない規模でも届出を求めていたりします。[1]
相談の前に、教える内容、場所、曜日と時間帯、1回の料金と人数、年の収入の見込みを1枚にまとめておくと、話が早く進みます。これがそのまま事業計画書の骨組みになります。
事業計画書と開業届は、この順番
承認基準は、所得税法の開業届を出して事業を行うことと、事業計画書を作って事業を行うことを求めています。[3]事業計画書には、少なくとも事業の目的と業務内容、営業日と営業時間、収入の予定年額を書く必要があります。週休日以外は電話やメールの対応も含めて業務を行わない、と書き添えることも例に挙がっています。[1]
見落としやすいのが順番です。Q&Aは、開業届は相談の時点では出さず、下書きをもとに承認の可否を相談したうえで出すよう求めています。開業届を出したあとは、その写しを提出します。税務署は開業届の控えに受付の日付印を押さなくなっているため、提出した日を記録した写しが要る場合は、e-Taxで申請して「電子申請等証明書」の交付を受けます。[1]
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 事業計画書の案と承認申請書の下書きを作る |
| 2 | 所属府省の担当者に相談する |
| 3 | 承認申請書を出し、承認を受ける |
| 4 | 開業届を出し、その写しを提出する |
| 5 | 教室を始める |
承認は2年まで。変更と異動のたびに見直し
知識・技能をいかした兼業の承認には、2年を超えない期限が付きます。関わる人の範囲や時間、収入の見込みが変わりやすい事業だからです。[1]続けるには、期限ごとに改めて承認を受けます。
事業の内容が変わった場合や官職が異動した場合は、1か月以内に改めて承認を受けることとされています。収入が見込みを超えて20万円を超えそうになったときも、その時点で報告し、手続きを確かめます。異動先で承認できないと判断されれば、事業はやめる必要があります。[1]所得が出れば確定申告も必要で、Q&Aは国税庁の案内に従って適切に申告するよう求めています。[1]ここまでは国家公務員の話です。次は地方公務員です。
地方公務員の場合
市役所や県庁、公立病院などで働く地方公務員には、人事院の承認基準はそのまま当てはまりません。許可を出すのは、それぞれの自治体の任命権者で、基準も自治体ごとに決まります。
許可制であることは同じ
地方公務員も、営利企業を営むことや報酬を得て事業に従事することには、任命権者の許可が要ります。[5]許可の前提になる考え方は、公務の能率を確保すること、職務の公正を確保すること、職員の品位を保つことの3つです。[5]
国家公務員の承認基準と言い方は違いますが、見るところは近い内容です。仕事との利害関係、本業への支障、公務への信頼という3つの軸で、自分の計画を説明できるように準備しておくと、どちらの場合も役に立ちます。
総務省は2025年6月に、自営兼業も可能と通知した
総務省は2025年6月11日、地方公務員の兼業について自治体に技術的助言を通知しました。その中で、職員個人のスキルや地域の実情を踏まえた自営兼業も、基本的な原則を満たせば認めることが可能だとしています。許可するときに条件を付けたり、許可したあとも定期的に状況の報告を求めたりすることも挙げています。[5]
時間についても、国家公務員の兼業許可で使われている週8時間・月30時間・1日3時間の目安が紹介されています。[5]自治体の基準がこれと同じとは限りませんが、計画を立てるときの物差しとして使えます。
まず、自分の自治体の許可基準を探す
同じ通知によると、兼業の許可基準を設けている自治体は都道府県と市区町村の64%、その基準を庁内外に公表している自治体は56%でした。総務省は、基準を設けていない自治体に設定を、公表していない自治体に公表を求めています。[5]
自治体のホームページで「兼業 許可基準」と探し、見つからなければ人事課に問い合わせます。基準がはっきりしないまま始めて、あとで懲戒処分に至ることを避けるのが、総務省が公表を求める理由として挙げているものです。[5]公立学校の先生には、教育公務員特例法による別の扱いがあり、教員の副業の記事で整理しています。基準が確かめられたら、計画を予約の受け方に落とし込みます。
事業計画を予約ページに写す
事業計画書に書いた営業日と営業時間は、承認のための書類であると同時に、実際に守らなければならない約束です。申し込みをメッセージや電話で受けていると、「平日の夜しか空いていない」という頼みに応じたくなる場面が出てきます。予約の受け方そのものを計画どおりにしておくと、その場で迷わずに済みます。
受付時間を、承認された週末の枠だけにする
予約ページを使うなら、受付時間を事業計画書の営業日と営業時間と同じにします。たとえば土曜と日曜の9時から12時だけを受付時間にしておけば、平日の夜や勤務日に予約が入ることはありません。
月30時間の目安に合わせるなら、1日の受付時間を短めに取り、土日が5回ある月の分も考えて組みます。祝日の扱いも事業計画書の営業日に合わせ、営業日に入れていない日は休みとして閉じておきます。
受付の締切と、先の予約の範囲
レッスンの前日の夜に申し込みが入ると、準備を勤務日の夜にすることになります。前日の正午までや2日前までといった受付の締切を設けておくと、準備を週末の中に収めやすくなります。
何日先まで予約を受けるかも決めておきます。承認の期限は2年までで、異動があれば見直しになるため、半年先や1年先の予約を受けるより、1〜2か月先までに絞っておくほうが、何かあったときに動かす予約が少なくて済みます。
SailLab(セイルラボ)
以下では、こうした受け方ができるツールの一例として、SailLab を取り上げます。

SailLab は、予約ページ・カレンダー連携・予約フォーム・リマインドメール・決済を1つにまとめた国産の予約システムです。
- 曜日ごとの受付時間を決められます。土曜と日曜の午前だけ、のように事業計画書と同じ枠にできます
- 何時間前まで予約を受け付けるか、何日先まで受け付けるかを予約ページごとに決められます
- 祝日や、自分で決めた休みの日を、日付や期間で閉じられます
- レッスン料を予約のときにカードで受け取る設定ができ、予約の記録が残るので、収入の見込みの確認にも使えます
教室やレッスンでの使い方は教育・レッスン向けのページで紹介しています。カード決済には Stripe の決済手数料3.6%がかかり、SailLab の手数料はプランによって0%または3%です。料金は料金ページで確認できます。
できないこと
できないことも書いておきます。週に何時間まで、月に何件まで、といった予約の上限を自動で止める設定はありません。時間の目安は、受付時間の枠の広さで守る形になります。月謝制の自動引き落としや、毎週同じ曜日の予約をまとめて押さえる定期予約もありません。
承認の手続きや、事業の時間の記録はSailLabの外で行います。予約の一覧は、承認の条件として状況の報告を求められたときに、レッスンの日時を確かめる材料になります。最後に、始める前に確かめることをまとめます。
始める前のチェックリスト
公務員が週末に教室を開くときは、相談と承認が先、開業届と最初のレッスンがあとです。始める前に、次の項目を1つずつ確かめてください。
| 確かめること | 目安 |
|---|---|
| 仕事との利害関係 | 担当業務と教える内容・場所・客が重ならない |
| 日時 | 週休日だけ。年次休暇を前提にしない |
| 時間 | 週8時間・月30時間・勤務日1日3時間まで(準備も含めて) |
| 収入 | 年20万円を超える見込みなら「自営」として承認を受ける |
| 形 | 自分の名前で自分が教える。肩書きを宣伝に使わない |
| 場所 | 国家公務員宿舎の中では営めない |
| 手続き | 相談 → 承認 → 開業届 → 写しの提出。承認は2年まで |
| 地方公務員 | 自分の自治体の許可基準を確かめる |
副業として個人セッションを受けるときの時間の組み方はコーチングの副業の記事で、レッスン料の決め方はレッスン料の値上げの記事で詳しく扱っています。週末の枠だけを受け付ける予約ページは、無料アカウントから作成できます。クレジットカード登録は不要です。
参考資料
- 人事院「自営兼業制度の見直しに関するQ&A」(2026年3月更新版、問1〜問25。2026年10月23日確認)
- e-Gov法令検索「国家公務員法」第103条(2026年10月23日確認)
- 人事院「自営兼業制度の見直しについて(概要)」(2025年12月、参考資料に令和7年人事院報告の抄録を含む)
- 人事院「自営兼業制度の見直しについて」報道資料(2025年12月19日)
- 総務省「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について」(令和7年6月11日 総行公第72号)
岡田 沙織 / SailLab 編集部
SailLab 編集部で、ひとりで事業を営む方や小さなチームに向けて、予約と日程調整のしくみづくりや、Googleカレンダー・Excelなど手元のツールの使い方とその限界について書いています。