2027年卒の学生の84.9%が、就職活動でAIを使っています。一方で、選考にAI面接があると受験意欲が下がると答えた学生は51.1%でした。採用でのAIの広がりは、会社の側より先に、応募者の側で起きています。
「AI面接」で調べると、上位に並ぶのはAI面接のサービスや比較の記事です。この記事は何かを売る立場からではなく、採用が年に数人の会社がAI面接を入れるべきかどうかを判断するための材料をまとめます。応募者の調査、採用で守るルール、AIで準備した答えでも見極められる質問、応募者に伝える文面の順に見ていきます。
この記事の結論
AI面接は、応募が多く一次選考に人手が足りない会社には向きますが、採用が年に数人の会社では、応募者の受験意欲を下げる不利のほうが大きくなりがちです。2027年卒の学生は84.9%が就活でAIを使い、AI面接で受験意欲が下がると答えた人は51.1%でした。導入するなら目的と評価項目を応募者に伝え、人による面接を選べる道を残します。
目次
面接の進め方全般は、営業・採用チーム向けリソース集にまとめています。
応募者の85%がAIを使い、半数はAIに評価されたくない
マイナビが2026年4月に2027年卒の大学生1,258人に聞いた調査では、就活でAIを使ったことがある学生は84.9%で、前年から18.3ポイント増えました。使い道で多いのはエントリーシートの推敲で、面接対策に使った学生も38.4%います。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 就職活動でAIを使ったことがある | 84.9% |
| エントリーシートの推敲に使った | 71.8% |
| 面接対策に使った | 38.4% |
| AI面接があると受験意欲が下がる | 51.1% |
| 受験意欲は変わらない | 42.1% |
受験意欲が下がる理由は、「人に評価してほしいから」が55.2%、「AI(機械)に判断されたくないから」が50.9%でした(出典: マイナビ「2027年卒 大学生キャリア意向調査4月<就活生のAI利用について>」、2026年10月3日確認)。
この2つの数字は、反対の方向を向いています。応募者は準備にAIを使うのが当たり前になった一方で、評価する側がAIになることには半数が抵抗を感じている。会社にとっての論点は、AI面接を入れるかどうかの前に、AIで準備してくる応募者をどう見極めるかに移っています。
AI面接が向く会社、向かない会社
AI面接が解決するのは、主に応募が多すぎて一次選考に人手が足りないという問題です。毎回同じ質問をし、24時間いつでも受けられ、面接官の日程を押さえる必要がありません。この問題を抱えていない会社では、得られるものが少なくなります。
| 判断の材料 | 向いている | 向いていない |
|---|---|---|
| 応募の数 | 一次選考に数百人が来る | 1回の募集で数人から数十人 |
| 選考の段階 | 一次選考の絞り込み | 最終面接、少人数の中途採用 |
| 職種 | 同じ基準で大勢を見る職種 | 経験や専門性を個別に確かめる職種 |
| 採用の状況 | 応募者が十分に集まっている | 応募が少なく、辞退が痛い |
採用が年に数人の会社は、たいてい右の列に当てはまります。応募が少ない状況で、応募者の半数が受験意欲を下げる選考を一つ足すことは、集まった人を自分で減らすことになりかねません。
反対に、応募が数百人規模で、面接官が一次選考に追われて最終選考に時間を割けない会社なら、AI面接で一次を絞り、人の時間を後半に集める設計は理にかなっています。
導入する前に確かめる、採用のルール
AI面接では、応募者の映像、音声、発言の文字起こし、評価のデータを扱います。採用で個人情報を集めるときは、個人情報保護法に加えて、職業安定法とその指針が定める、求職者の個人情報のルールが適用されます。
- 個人情報は、募集の目的の範囲内で集め、その目的の範囲内で保管し使う
- 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地、思想や信条、労働組合への加入状況などは、原則として集めない。具体例には、家族の職業や収入、容姿やスリーサイズなど差別的な評価につながる情報が挙がっている
- 本人から直接、または本人の同意のもとで集める
- 正確に保ち、紛失や漏えいを防ぎ、見られる人を限り、不要になったら破棄や削除をする。求職者から求められたら、その措置を説明する
違反した場合は改善命令の対象となり、命令に違反すると罰則が科される場合があります(出典: 群馬労働局「求職者等の個人情報の取扱いについて」、2026年10月3日確認)。映像を分析するAI面接を検討するなら、何を評価に使っているか、容姿や話し方の癖が点数に入らないか、データをいつ削除するかを、サービスの提供元に確かめておく必要があります。
もう1つは、障害のある応募者への配慮です。採用の場面での合理的配慮は、障害者雇用促進法によって事業主に義務づけられています。応募者から申し出があれば、面接を筆談で行う、就労支援機関の職員の同席を認めるといった配慮を検討します(出典: 厚生労働省「合理的配慮指針」、2026年10月3日確認)。録画や音声で答える形式が難しい人のために、人による面接や書面で答える方法を選べるようにしておくと、この配慮にも、AIに評価されたくない応募者にも対応できます。
AIで準備した答えでも見極められる質問
応募者の4割近くがAIで面接対策をしている以上、「強みは何ですか」「志望動機を教えてください」への答えは、整っていて当然です。見極めの差がつくのは、準備した答えのあとに続ける、事実を確かめる質問です。
| 最初の質問 | 続けて聞くこと | 確かめていること |
|---|---|---|
| 力を入れて取り組んだことは | そのとき、あなた自身が決めたことを1つ教えてください | 役割と判断が本人のものか |
| 成果を出した経験は | 始める前と後で、数字はどう変わりましたか | 具体的な事実を覚えているか |
| 失敗した経験は | 次に同じ場面が来たら、最初に何を変えますか | 経験から学んだことを言葉にできるか |
| この仕事で活かせることは | 入社して最初の1か月で、何から手をつけますか | 仕事の中身を想像できているか |
どの応募者にも同じ順番で聞き、答えを同じ基準で評価すると、比べやすくなります。質問と評価の基準を先に決める方法は構造化面接と評価シートの記事、聞いてはいけない質問は面接官の質問集にまとめています。
AIの使用を禁じるより、「準備にAIを使いましたか。どこを自分で直しましたか」と聞くほうが、仕事でAIをどう使う人かがわかります。
応募者に伝える文面
AI面接を入れる場合は、何のために使い、何を評価し、ほかの方法も選べることを、受ける前に伝えます。受験意欲が下がる理由の上位が「人に評価してほしい」である以上、最終的に人が判断することを書いておくだけでも印象が変わります。募集要項や案内メールに、次のように書けます。
- 一次選考では、録画形式のAI面接を使います。質問はすべての方に共通で、回答の内容をもとに評価します
- AIの評価は判断の材料の一つで、合否は担当者が決めます
- 録画や音声での回答が難しい場合や、担当者との面接を希望される場合は、ご連絡ください。別の方法で選考します
- 録画データは選考のためだけに使い、選考の終了後〇か月で削除します
削除の時期は、実際に使うサービスの設定と合わせて書きます。書いたとおりに運用できないことは書かないようにします。
今期の採用で決める5つ
- 一次選考に、どれだけの応募と人手があるかを数える。人手が足りていればAI面接は急がない
- AI面接を入れる場合は、一次選考だけにする。最終の判断は人が行う
- 評価に使う項目と、データを削除する時期を、提供元に確かめて書き出す
- 人による面接を選べる道を、募集要項と案内に書く
- 面接の質問に、事実を確かめる問いを足す。全員に同じ順番で聞く
面接の当日の欠席を減らす方法は面接の無断欠席を減らす記事で紹介しています。
中村 遼 / SailLab 編集部
SailLab 編集部で、営業・採用の日程調整、面接や説明会の受付、士業やコンサルタントの相談の受け方についての記事を担当しています。