6か月コースを申し込んだ生徒が、3か月目に「やめたい」と言ってきた。規約には「途中解約は返金しません」と書いてある。この教室は、受け取った受講料をそのまま持っていてよいのでしょうか。
語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室の場合、その答えは契約の期間と金額で決まります。特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たれば、規約に何と書いてあっても、教室が受け取れる金額には上限があります。この記事では、消費者庁の資料をもとに、対象になる条件、教室側が渡す書面、クーリング・オフ、途中でやめた生徒に返す金額を、計算例とあわせて教室の側から整理します。
この記事の結論
語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室は、期間が2か月を超え、入学金や教材費を含む総額が5万円を超える契約を結ぶと、特定継続的役務提供に当たります。契約の前後に決まった書面を渡し、8日間のクーリング・オフと中途解約に応じる必要があります。途中でやめた生徒から受け取れるのは、受けた授業の代金と、語学教室なら「5万円か残額の20%の低いほう」までです。
目次
教室やレッスンの予約・支払いの整え方は、サービスビジネス向けリソース集にまとめています。
この記事は法律の内容を紹介するもので、個別の契約が対象になるかの判断は含みません。迷う場合は、消費生活センターや弁護士に確認してください。
対象になるのは、2か月と5万円を両方超えたとき
特定継続的役務提供の対象は7つのサービスで、そのうち教える仕事は次の4つです。どれも、契約期間が2か月を超え、かつ支払う総額が5万円を超えるときに対象になります。
| サービス | 中身 | 対象になる契約 |
|---|---|---|
| 語学教室 | 語学の教授(受験・補習のための指導を除く) | 2か月超・5万円超 |
| 家庭教師 | 受験対策や学校の補習の指導(学習塾以外の場所) | 2か月超・5万円超 |
| 学習塾 | 受験対策や補習の指導(事業者が用意する場所) | 2か月超・5万円超 |
| パソコン教室 | パソコンやワープロの操作の教授 | 2か月超・5万円超 |
5万円には、受講料だけでなく入学金、教材費、関連商品の代金も含まれます。また、電話やインターネットで行う場合も広く含まれるとされています。幼稚園や小学校の受験対策は家庭教師と学習塾から除かれ、浪人生だけを対象にしたコースは学習塾の対象外です(出典: 消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」、2026年10月3日確認)。
同じページには、適用されない場合として「営業のため、又は営業として締結するもの」が挙げられています。会社が社員研修として申し込む語学研修のような契約は、一般に消費者との契約とは扱いが異なります。個人向けと法人向けのコースを両方持つ教室は、契約ごとに相手がどちらかを確かめておきます。
契約の前と後に渡す2つの書面
対象になる契約では、教室は2回書面を渡します。契約を結ぶ前に契約の概要をまとめた「概要書面」、結んだあと遅滞なく契約内容を明らかにした「契約書面」です。
- 概要書面:事業者名と連絡先、サービスの内容、対価と支払う金銭の概算、支払時期と方法、提供期間、クーリング・オフ、中途解約に関する事項など
- 契約書面:上の項目に加えて、契約を担当した人の氏名、契約の年月日、前受金の保全措置の有無など
書面をよく読むべきことと、契約書面のクーリング・オフの事項は、赤枠の中に赤字で書くよう定められています。文字の大きさは8ポイント以上です。さらに、前払いで5万円を超える契約を受ける教室は、業務と財産の状況を書いた書類を用意し、生徒が求めたら見せる必要があります。貸借対照表や損益計算書がこれに当たります。
8日間は理由なしで解約できる
生徒は、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内なら、理由を問わず書面か電磁的記録で契約を解除できます。教材などの関連商品の契約も一緒に解除できます。このとき教室は、すでに行った授業の代金も含めて請求できず、受け取ったお金は返します。
事実と違うことを告げたり、威圧したりして解約を思いとどまらせた場合は、8日を過ぎても解除できます。8日間は書面を受け取った日から数えるため、書面を渡す日を記録しておくと、教室の側でも期限を確かめられます。
途中でやめた生徒に返す金額
8日を過ぎても、生徒は将来に向かって契約を解約できます。このとき教室が受け取れる金額には、サービスごとに上限があります。上限を超えて受け取っているぶんは返さなければならず、「途中解約は返金しません」という規約は、この上限より不利な部分が通りません。
| サービス | 授業の開始前 | 開始後(受けた分の代金に加えて) |
|---|---|---|
| 語学教室 | 1万5,000円 | 5万円か契約残額の20%の低いほう |
| 家庭教師 | 2万円 | 5万円か1か月分の授業料の低いほう |
| 学習塾 | 1万1,000円 | 2万円か1か月分の授業料の低いほう |
| パソコン教室 | 1万5,000円 | 5万円か契約残額の20%の低いほう |
契約残額は、総額から受けた授業の分を引いた金額です。実際の金額に当てはめると次のようになります。
- 語学教室、6か月24回で12万円、8回受けて解約:受けた分4万円+(5万円と残り8万円の20%=1万6,000円の低いほう)=最大5万6,000円。6万4,000円を返します
- 同じ契約を、授業の開始前に解約:受け取れるのは1万5,000円まで。10万5,000円を返します
- 学習塾、月3万円の6か月分18万円を前払い、2か月で解約:受けた分6万円+2万円=8万円。10万円を返します
- 家庭教師、月4万円の3か月分12万円、1か月で解約:受けた分4万円+4万円=8万円。4万円を返します
前払いの期間が長いほど、途中でやめられたときに返す金額は大きくなります。月謝を何か月分まとめて受け取るかは、この返金の大きさと合わせて考える必要があります。
対象にしない売り方と、対象になるときの準備
対象になるのは2か月と5万円を両方超える契約なので、どちらかに収まる売り方なら、書面とクーリング・オフの手続きは要りません。
- 1回ごとに予約と支払いを受ける。まとめて前払いを受けないため、期間も金額も積み上がりません
- 期間を2か月以内に区切る。2か月のコースを続けて申し込んでもらう形です
- 入学金や教材費を含めた総額を5万円以内にする
回数券のように何回分かをまとめて売る場合は、有効期限に注意が必要です。消費者庁のQ&Aは、有効期限のない回数券は、提供期間が常に2か月を超えるものとして扱うとしています。詳しくはオンライン家庭教師の始め方の記事で解説しています。
長期のコースを売ること自体は悪いことではありません。対象になる売り方を選ぶなら、概要書面と契約書面のひな形、解約の受付方法、返金の計算方法を、最初の申し込みの前にそろえておきます。
1回ごとの予約と支払いで受ける
1回ごとに予約と支払いを受ける形をとるなら、受付の仕組みで見ておきたいのは次の4つです。
- 生徒が空いている日時を選び、予約と同時に1回分を支払えるか
- 回数分をまとめて売る場合に、有効期限を設定できるか
- キャンセルや返金を、教室が支払いごとに処理できるか
- 予約の確認とリマインドが自動で届くか
以下では、この点を満たすツールの一例として、SailLab を取り上げます。
SailLab(セイルラボ)

SailLab は、予約ページ・カレンダー連携・事前決済を1つにまとめた国産の予約システムです。
- 生徒が日時を選ぶと、その場で1回分のカード決済まで完了する。入金先は教室のStripeアカウント
- レッスンに使えるポイントをまとめて販売でき、有効期限を日数か月数で設定できる。期限は購入時の条件のまま保たれる
- 返金は、教室が支払いごとに全額か一部で行える
- 確認とリマインドのメールが自動で届き、オンラインのレッスンではZoomやGoogle MeetのURLも発行される
できないことも書いておきます。SailLab は概要書面や契約書面を作成・交付する機能を持っていません。対象になる長期のコースを売る場合、書面は教室で用意する必要があります。カード決済にはStripeの手数料3.6%がかかり、SailLab の手数料はプランによって0%または3%です。月額料金とあわせて料金ページで確認できます。教室での使い方は教育・スクール向けのページで紹介しています。
自分の教室で確かめる5つ
- 教えている内容は4つのどれかに当たるか。語学、受験・補習、パソコンの操作のいずれか
- 一番長い契約は2か月を超えるか。有効期限のない回数券は超えるものとして数える
- 入学金と教材費を含めた総額は5万円を超えるか
- 超えるなら、概要書面と契約書面を用意しているか
- 規約の解約条項は、上の上限表の範囲に収まっているか
キャンセル料の決め方と規約の文例はレッスンのキャンセルポリシーの記事、回数券を販売するときの期限と資金決済法の目安は回数券アプリの記事で紹介しています。
1回ごとの予約と支払いの受付ページを作ってみる場合は、無料アカウントから作成できます。クレジットカード登録は不要です。
田口 奈津子 / SailLab 編集部
SailLab 編集部で、予約受付・事前決済・無断キャンセル対策や、教室とレッスンの運営など、対面とオンラインでサービスを提供する事業者向けの記事を担当しています。