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内定辞退の防止に、誓約書はもう効かない。効くのは会う場と条件の書面

22分で読める 中村 遼 中村 遼 / SailLab 編集部
内定辞退の防止に、誓約書はもう効かない。効くのは会う場と条件の書面

内定を伝えて1週間後に、「他社に決めました」という短いメールが届く。中途採用でこれが起きた割合は、2025年に内定を出した人の15.0%まで上がりました。前年の9.3%から5.7ポイントの増加で、従業員51〜300名の会社では18.9%と、規模別で最も高い数字です。

辞退を止めようとして、誓約書を書いてもらう、他社の選考をやめるよう頼む、といった手を考える会社もあります。ところが新卒採用の調査では、誓約書を「効果があった」と答える企業が4年で約7分の1に減りました。読み終えるころには、自社の辞退率を計算し、次に内定を出すときに何を変えるかを決められるはずです。

この記事の結論

内定辞退を減らすうえで、誓約書や他社選考の辞退を求める引き止めは、もう効きません。マイナビの調査で誓約書を「効果があった」とする企業は2022年卒の57.0%から2026年卒の8.3%に減り、他社辞退の要請は0.0%でした。効いているのは、懇親会や先輩・人事との面談のように人と会う場と、変更の範囲まで書いた労働条件を早く渡すことです。

採用に関するほかの記事は、営業・採用チーム向けリソース集にまとめています。

内定辞退はどれくらい起きているか

新卒採用では、内々定を出した学生の半分以上に辞退された企業が41.5%あります。中途採用では、2025年に内定を出した人の15.0%が入社しませんでした。まずは世の中の数字と、自社の数字を並べられるようにします。

新卒の辞退率

マイナビの「企業新卒内定状況調査」は、内々定を出した学生のうち辞退した学生の割合を、企業ごとに聞いています。2026年卒と、7年前の2019年卒を並べると次のとおりです。

内々定の辞退率2026年卒2019年卒
辞退者なし23.8%16.1%
1〜2割16.7%28.0%
3〜4割17.9%34.9%
5割以上41.5%21.1%

1〜2割と3〜4割は、元の表の1割ごとの数字を足したものです(出典: マイナビキャリアリサーチLab「内定(内々定)辞退率の動向」、2026年3月16日公開、2026年10月3日確認)。

目を引くのは、両端が同時に増えていることです。辞退が5割以上の企業は2倍近くになり、辞退者がいない企業も16.1%から23.8%に増えました。中間の企業が減り、辞退をほとんど出さない会社と、半分以上を失う会社に分かれつつあります。同じ採用市場の中で差がつくということは、会社の側でできることがある、ということでもあります。

中途の辞退率と会社の規模

中途採用は、同じマイナビの「中途採用状況調査 2026年版」に数字があります。従業員3名以上の企業で中途採用を担当する1,500人に、2025年12月に聞いた調査です。

区分内定辞退率
全体(2025年)15.0%
全体(2024年)9.3%
従業員51〜300名18.9%
金融・保険・コンサルティング24.3%

この辞退率は、1社あたりの内定者数の平均と採用者数の平均から計算した数字で、会社ごとの辞退率を平均したものではありません(出典: マイナビ「中途採用状況調査 2026年版(2025年実績)」、2026年10月3日確認)。規模別で最も高いのが51〜300名だという点は、採用担当が1人か2人で、選考と内定後の連絡を同じ人が抱えている会社に重なります。

自社の辞退率を計算する

自社の数字は、1年分の記録があれば出せます。中途の場合、調査と同じ考え方で(内定を出した人数 − 入社した人数)÷ 内定を出した人数です。

たとえば1年で8人に内定を出し、6人が入社した会社なら、(8 − 6)÷ 8 = 25.0%です。全体の15.0%より高く、8人に内定を出すと1人か2人は入社しない計算になります。

ここで1つ足しておきたいのが、辞退した時期の記録です。承諾の前に断られたのか、承諾したあとで断られたのかで、効く手が変わるからです。

段階人数の例辞退率の例
内定を出した8人—
承諾した7人承諾前の辞退 1 ÷ 8 = 12.5%
入社した6人承諾後の辞退 1 ÷ 7 = 14.3%

承諾前の辞退が多い会社は、内定を出すまでの速さと条件の伝え方を見直します。承諾後の辞退が多い会社は、入社までの連絡を見直します。どちらの数字が大きいかで、この記事のどの章から手をつけるかが決まります。応募から内定までの段階も含めて記録する方法は、採用の歩留まりの記事で表のひな形とともに紹介しています。

数字の大きさが分かったら、次は辞退の中身です。

辞退の理由は、半分が「他社に先に決まった」

新卒の内定辞退の理由として企業が最も多く挙げたのは、「より志望度の高い企業から内定が出た」の49.8%でした。残りは職種、勤務地、業種、給与といった条件の話で、社風や面接官の印象を挙げた企業はわずかです。

新卒が辞退する理由

2026年卒の企業新卒内定状況調査で、内定辞退の理由として多かったものは次のとおりです(複数回答、出典は1章で挙げたマイナビのコラム)。

理由割合
より志望度の高い企業から内定が出た49.8%
希望職種17.7%
希望勤務地15.1%
企業業種12.1%
給与条件11.4%
福利厚生など制度9.6%
社風2.4%
保護者からの反対1.9%
面接官など社員の人柄0.6%
辞退理由を学生に確認していない6.1%

注意したいのは、これが企業が聞き取った理由だという点です。辞退する学生が「面接官の態度が嫌だった」と本人に伝えることは、まずありません。社風や人柄の数字が小さいのは、影響が小さいからとは限らず、言われていないだけという可能性もあります。理由を確かめていない企業も6.1%あります。

中途が辞退する理由

中途の辞退理由を企業側の回答で示した一次データは、今回確認した調査にはありませんでした。そのため数字ではなく、中途の候補者が置かれている状況から整理します。

中途の候補者の多くは、働きながら複数の会社を並行して受けています。内定が出た時点で、ほかの会社の結果や、現職からの引き止めと比べられるのが前提です。比べる材料は、給与、仕事の中身、勤務地、働き方、そして入社後の見通しです。

その見通しを左右するのが、書面に書かれた条件です。Yahoo!知恵袋には、内定を辞退した理由として「契約社員6ヶ月だったこと、残業や離職が多いという口コミ」を挙げ、そのあとも迷い続けている相談があります。正社員登用が前提だと説明されていても、書面の雇用形態と外の口コミが、本人の判断を決めていました。

「他社に決めた」の中にある2つ

「他社に決めた」という一言には、たいてい2つの意味が含まれています。1つは他社のほうが先に結論を出したこと、もう1つは他社のほうが入社後の姿を具体的に描けたことです。

中身起きていること効く手
速さこちらが面接日を決めている間に、他社が内定を出す日数を縮める(6章)
見通し仕事、条件、一緒に働く人が具体的に分からない会う場と条件の書面(4章・5章)

志望度そのものは、内定の段階では大きく変えられません。変えられるのは、比べられる前に結論を出すことと、比べられたときに不安が残らないようにすることです。

理由が分かると、引き止めたくなります。ただ、その手の多くはもう効きません。

効かなくなった引き止め方と、越えてはいけない線

誓約書、他社の選考をやめるよう求めること、保護者の同意を取ること。どれも辞退を「止める」ための手ですが、効果を感じる企業は少なく、2つは政府の要請で控えるよう求められています。そもそも内定辞退は、法的に止められるものではありません。

誓約書を効果ありとする企業は約7分の1に

マイナビの「企業新卒採用活動調査」は、前の年の内々定者に行った辞退対策のうち、効果があったものを企業に聞いています。2022年卒の調査と2026年卒の調査を並べたのが、次の表です(出典は1章で挙げたマイナビのコラム)。

施策2022年卒調査2026年卒調査
誓約書の提出57.0%8.3%
内定者懇親会(食事会等)56.2%59.6%
人事との面談37.0%18.9%
定期的なメール連絡45.7%19.8%
他社の選考の辞退を要請2.0%0.0%

2022年卒の調査は多くの施策で数字が高く、ほとんどの施策が下がっています。その中で、誓約書は2022年卒の調査で最も多く挙げられた施策でした。それが8.3%まで下がり、上がったのは懇親会だけです。下がった理由までは調査から分かりませんが、次の2つの節を読むと、誓約書に辞退を止める力がもともとなかったことは分かります。

他社の選考をやめるよう求めるのはオワハラ

政府は毎年、経済団体に向けて就職・採用活動のルールを要請しています。2026年3月24日付の2027年卒向けの要請は、内定や内々定と引き換えに他社への就職活動をやめるよう学生に強要することを「オワハラ」と呼び、職業選択の自由を侵害するおそれがある、許されない行為だとしています(出典: 内閣官房ほか「2027(令和9)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請事項」、2026年10月3日確認)。

この要請は、青少年雇用促進法に基づく厚生労働省の指針を根拠に挙げています。対象は新卒の学生ですが、効果の面でも、他社選考の辞退を求めて効果があったと答えた企業は0.0%でした。選考状況を聞くことと、辞退を求めることは別のことです。聞き方は6章で紹介します。

家族への説明と、保護者の同意の違い

家族へのフォローは、内定辞退の対策としてよく勧められます。ただ、同じ要請の注記は、内定辞退を防ぐ目的で内定の承諾に保護者の同意を求めることを「オヤカク」と呼び、オワハラに当たり得るケースがあるとしています。

してよいこと控えること
家族に見せられる会社案内や条件の資料を渡す承諾の条件として保護者の同意書を求める
本人が望めば、家族からの質問に答える場を用意する本人を通さずに保護者へ連絡して承諾を迫る

数字で見ても、保護者の反対を辞退理由に挙げた企業は1.9%、保護者への情報提供を効果があったとした企業は2.7%です。家族は決め手になりにくく、説明の資料を用意しておけば十分な場面がほとんどです。

内定辞退を法的に止めることはできない

厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、採用内定を、一般に始まる日が決まっていて、一定の場合には解約できる労働契約が成立した状態と説明しています。そのうえで、内定者からの辞退は基本的に問題なく、信義則に大きく反する場合に損害賠償を求められる可能性があるにとどまる、としています。

労働者の意思に反して働くことを義務づけることはできない、とも書かれています。内々定の辞退については、職業選択の自由があるため、違法になることはほとんど考えにくいとしています(出典: 厚生労働省「確かめよう労働条件」採用の内定・内々定について、取消や辞退する場合の注意点、2026年10月3日確認)。

逆に、会社からの内定取消は解雇に当たり、合理的な理由が必要です。辞退は止められず、取消は簡単にはできない。この非対称があるので、内定のあとにできることは、選ばれる理由を増やすことだけです。誓約書の効き目が落ちたのも、この現実と食い違わない結果です。

では、何が効いているのか。同じ調査に答えがあります。

効いているのは、人と会う場

2026年卒の調査で、企業が効果を感じた内定辞退対策の上位7つは、どれも人と会う場か、人からの連絡でした。1位の内定者懇親会は59.6%で、2位以下を大きく引き離しています。

企業が効果を感じた施策

施策(2026年卒調査)効果があった
内定者懇親会(食事会等)59.6%
社員との座談会23.8%
内々定式22.8%
社内見学・工場見学21.4%
先輩との面談20.3%
定期的なメール連絡19.8%
人事との面談18.9%
内定者アルバイト9.8%
社内報の送付9.8%
入社前の配属先告知や確約5.2%
効果があると感じたものはなかった11.4%

上位に並ぶのは、内定者が一緒に働く人の顔を知る機会です。条件は書面で比べられますが、どんな人と働くかは会わないと分かりません。他社と比べられたときに残る不安を、ここで減らしています。

新卒向けの場のつくり方

新卒の場合、使える場は5つあります。それぞれ、減らせる不安が違います。

場減らせる不安つくり方の要点
内定者懇親会同期になじめるか同期同士が話す時間を長くとる
社員との座談会どんな人と働くか年の近い社員と少人数で、人事は進行だけにする
社内見学どこで、どう働くか実際に座る席や使う道具を見せる
経営層との交流会社の先行きはどうか一方的な説明より、質問に答える時間を長くする
内定者アルバイト・体験入社仕事についていけるか学業に差し障らない日数にする

日程の組み方にも、政府の要請が関わります。2027年卒向けの要請は、面接や試験を土日・祝日、平日の夕方以降、長期休暇に行うよう求めています。内定後の座談会や面談も、授業やゼミと重ならない時間に、学生が自分で選べる形にしておくと参加しやすくなります。

中途はオファー面談と配属先との面談

中途の内定者は働いているので、懇親会や見学に何度も来てもらうのは難しくなります。代わりに効くのが、内定を伝えたあとの1対1の面談です。新卒の調査でも、先輩との面談が20.3%、人事との面談が18.9%と上位に入っています。

オファー面談は、条件を説明するだけの場ではありません。次の順で進めると、候補者が比べるときの材料がそろいます。

順番話すことねらい
1採用した理由を、面接での具体的な場面とともに伝える求められている実感をもってもらう
2労働条件通知書を一緒に見て、求人との違いを説明する書面の疑問をその場で解く
3入社後3か月の仕事と、最初に一緒に働く人を伝える入社後の姿を描けるようにする
4質問を受け、ほかの選考の時期と回答の期限を相談する結論の時期をそろえる

そのあと、配属先の上司や同僚と30分ほど話す場を別に設けると、新卒の座談会と同じ役割を果たします。オファー面談は人事と配属先の上司が2人で出ることも多く、2人の予定が合う時間を候補者に選んでもらうのが、日程を最も早く決める方法です。

会う場で不安は減ります。ただ、最後に決め手になるのは紙に書かれた条件です。

条件は書面で、求人との違いは先に伝える

2024年4月から、募集のときと労働契約を結ぶときに示す条件に、就業場所と業務の「変更の範囲」が加わりました。さらに、求人で示した条件と違う条件で内定を出すときは、変わる点を示すことが職業安定法で求められています。

2024年4月から書く「変更の範囲」

厚生労働省は、2024年4月から労働条件明示のルールを改め、モデル労働条件通知書も新しくしています(出典: 厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」、2026年10月3日確認)。加わったのは主に次の項目です。

項目雇入れ直後の例変更の範囲の例
就業場所東京本社本社および首都圏の営業所
業務法人営業営業と営業企画
有期契約の更新上限契約期間1年更新は通算3年まで

例は、架空の会社の書き方を示したものです。「変更の範囲」は、入社直後だけでなく、将来の異動の見込みも含めた範囲のことです。転勤があるかどうかは、候補者が辞退理由に挙げる勤務地や職種そのものなので、ここを曖昧にした通知書は、比べられたときに負けやすくなります。

求人と違う条件は「変更」として示す

職業安定法第5条の3第3項は、職業紹介や募集のときに示した労働条件を変更、特定、削除、追加する場合、変わる条件を求職者に示さなければならないとしています。たとえば求人では「月給28〜35万円」としていて、内定で28万円と決める場合が「特定」に当たります。

裁判例もあります。千代田工業事件の大阪高裁判決(平成2年3月8日)は、求人票に書いた労働条件は、別の合意などの特段の事情がない限り、雇用契約の内容になるとしています。八州測量事件の東京高裁判決(昭和58年12月19日)は、求人票の見込額を著しく下回る額で賃金を決めるべきではないとしています(出典: 厚生労働省「確かめよう労働条件」求人票や求人広告に記載された条件が、実際の条件と違った場合の対処法、2026年10月3日確認)。

実務では、求人票と通知書を左右に並べた対照表を作り、違う行に印をつけて渡すのが確実です。違いが小さくても、候補者が自分で見つけるより、先に説明されたほうが信頼を損ないません。

通知書を渡す時期と、採用理由の伝え方

労働基準法は、労働契約を結ぶときに労働条件を書面で示すよう求めています。内定の時点で労働契約が成立していると考えられる場合が多いことを踏まえると、通知書は内定と同じ日に渡すのが自然です。口頭で内定を伝え、書面が1週間後に届くと、その1週間は候補者が他社の書面だけを見て比べる時間になります。

採用した理由は、抽象的な言葉より、面接での具体的な場面のほうが伝わります。「前職で納期の遅れを立て直したときの進め方が、うちのチームに必要だと考えました」のように、面接の記録から1つ選んで伝えます。評価シートに面接中のメモを残しておくと、この一言がすぐに書けます。メモの残し方は、評価シートに書く回答例の記事で扱っています。

条件を整えても、届くまでに時間がかかれば他社が先に決まります。

応募から承諾までの31日を縮める

中途採用で、応募から内定の承諾までにかかる日数は、平均31.5日です(WEB面接の場合、対面面接は30.2日)。最も長いのは応募から面接までの12.1日で、ここが最も縮めやすい段階でもあります。

段階ごとの日数

段階(WEB面接)平均日数
応募から面接まで12.1日
一次面接から内定まで11.0日
内定の通知から応諾まで8.9日
応募から応諾までの合計31.5日

面接の回数は平均3.0回です(出典は1章のマイナビ「中途採用状況調査 2026年版」)。3つの段階を足すと32.0日になり、合計の31.5日と少しずれます。段階ごとに答えた会社の範囲が違うためで、どちらもおよそ1か月と読めば十分です。

たとえば応募から面接までを3日にできれば、ほかの段階がそのままでも、単純な足し算で32.0日が約23日になります。候補者が別の会社と並行していれば、この9日の差が、どちらが先に結論を出すかを決めます。

面接の日時は候補者に選んでもらう

応募から面接までの12.1日の多くは、日程のやり取りに使われています。こちらが候補日を3つ送り、候補者が返事をし、合わなければもう一度送る。空いている日時を候補者が自分で選べる形にすれば、このやり取りがなくなります。

面接前の辞退や無断欠席も、同じやり方で減らせます。辞退がどの段階で起きているかは、選考辞退と無断欠席の調査をまとめた記事にデータがあります。働きながら転職を考えている人は、昼休みや夕方以降しか時間がとれないことも多いので、面接枠をその時間にも開けておくと決まるのが早くなります。

面接の印象と、その場で伝える評価

面接官の印象は、辞退理由としてはほとんど挙がりません。それでも、候補者は面接官を通して会社を見ています。面接の終わりに、その日に良かった点を1つ伝えるだけで、「この会社は自分を見てくれた」という記憶が残ります。

伝えてよいのは、評価が確定していない段階でも言える事実です。「チームで意見が割れたときの決め方の話は、具体的で分かりやすかったです」のように、行動を指して伝えます。面接で聞く質問と、聞いてはいけない事項は、面接官向けの30問と14事項の一覧で確かめられます。

他社の選考状況の聞き方

他社の選考状況を聞くのは、結論の時期を合わせるためです。辞退を迫るためではありません。たとえば次のように聞くと、候補者も答えやすくなります。

「ほかに選考が進んでいる会社があれば、結果が出る時期を教えていただけますか。こちらも、その時期までにお返事できるよう日程を組みます。」

聞いた時期は記録しておき、その時期より前に内定を出せるよう、残りの面接日を逆算します。回答の期限を設ける場合も、他社の結果を待てないほど短くすると、比べる前に断られるか、承諾後の辞退につながります。

面接の日程と同じく、内定後の面談や座談会の日程も早く決める必要があります。

内定後の面談と座談会を、予約で受ける

オファー面談、配属先との面談、座談会は、どれも複数の社員と候補者の予定を合わせる仕事です。メールで候補日を往復させると、面接で縮めた日数を、内定後にまた使ってしまいます。

日程の仕組みに求める4つ

ツールを選ぶ場合は、次の4つを確かめます。

  1. 複数の社員が全員空いている時間だけを出せる。人事と配属先の上司が2人で出るオファー面談に必要です
  2. 定員のある座談会を、空き席を見せながら受けられる。満席の回にキャンセル待ちを付けられると、空いた席が埋まります
  3. 内定者だけに渡せるリンクを作れる。一般の応募者に見えない形で面談の枠を出せます
  4. 前日のリマインドと、終わったあとのお礼のメールを自動で送れる。連絡の抜けを防げます

以下では、この4つを満たすツールの一例として、SailLab を取り上げます。

SailLab(セイルラボ)

内定者向けの社員座談会の予約ページで、平日夕方の回ごとに残りの席数が表示されている画面

SailLab は、予約ページ・カレンダー連携・リマインドメールを1つにまとめた国産の予約システムです。

  • 社員のGoogleカレンダーやOutlookの予定と照らし、指定した全員が空いている時間だけを出せる
  • 座談会は定員を決めて受け付け、残りの席数を表示し、満席の回にはキャンセル待ちを付けられる
  • リンクを知っている人だけが使える非公開の予約ページや、一度予約されると使えなくなるリンクを作れる
  • リマインドとお礼のメールは、送る時間と文面を決めておくと自動で届き、ZoomやGoogle MeetのURLも発行される

料金は料金ページで確認できます。採用での使い方は採用向けのページで紹介しています。採用担当が少なく、面接から内定後の面談までを同じ人が回している会社に向いたツールです。

この仕組みでできないこと

予約の仕組みが受け持つのは、日程を決めて知らせるところまでです。SailLab には、労働条件通知書を作る機能や、内定の承諾を管理する機能はありません。応募者の情報を管理する採用管理システムでもないので、選考の記録は別に残す必要があります。

連絡の手段はメールだけで、SMSやLINEでのリマインドはありません。内定者とLINEでやり取りしている会社は、予約ページのリンクをLINEで送り、確定とリマインドはメールで届く、という分担になります。

承諾をもらった後も、入社までは辞退が起こり得ます。

承諾から入社までの連絡

承諾は入社ではありません。1章の例で見たように、承諾した人のうち1人でも入社しなければ、辞退率は大きく動きます。新卒は正式な内定日が10月1日以降で入社が翌年の春なので、承諾から入社まで半年ほどあきます。中途でも、退職の手続きの分だけ間があきます。その間の連絡が欠かせません。

連絡の頻度と中身

2026年卒の調査では、定期的なメール連絡が19.8%、社内報の送付が9.8%、社内行事への参加が9.6%と、承諾後の連絡も一定の効果を挙げています。大切なのは、連絡ごとに新しい情報を1つ渡すことです。

時期連絡の中身の例
承諾の翌日お礼と、入社までの予定の一覧
2週間後配属先の上司からの短いメッセージ
その後1か月ごと社内報、チームの近況、座談会や行事の案内
入社の1週間前初日の流れ、持ち物、最初の1週間の予定

例は一つの目安です。連絡が多すぎると負担になるので、内定者が返事をしなくてよい内容を中心にします。

中途は退職の手続き中が要注意

中途の内定者は、承諾のあとで現職に退職を申し出ます。このときに現職から昇給や異動を提示されて引き止められることがあり、承諾後の辞退が起きやすい時期です。

この時期は、こちらから連絡の回数を増やすより、相談しやすい窓口を1つ決めておくほうが効きます。入社日を後ろにずらす相談に応じられるかどうかも、先に社内で決めておきます。引き継ぎの都合で1〜2週間ずれるだけなら、応じたほうが入社につながります。

配属先を早めに伝える

新卒の辞退理由では、希望職種が17.7%、希望勤務地が15.1%でした。入社前に配属先を伝えたり約束したりすることを効果ありとした企業は5.2%と少ないものの、職種と勤務地への不安を直接減らせるのはこの手だけです。

配属先を確約できない会社でも、候補になっている部署と、決まる時期は伝えられます。「4月の研修のあと、営業部か企画部のどちらかに決まります」と言えるだけで、何も分からない状態とは違います。

それでも辞退は起きます。そのときにすることで、次の採用が変わります。

辞退されたときにすること

辞退の連絡を受けたら、理由を聞くこと、次点の候補者に連絡すること、相手との関係を残すことの3つを、その週のうちに済ませます。

理由を聞き、記録に残す

理由を確認していない企業は6.1%あります。聞くときは、引き止めのためではないと先に伝えます。「今後の採用の参考にしたいので、差し支えなければ決め手になったことを教えてください」と聞くと、答えてもらいやすくなります。

聞いた理由は、1章の表と同じ形で、承諾前か承諾後かと一緒に記録します。1年分たまると、自社の辞退がどの段階で、どの理由で起きているかが見えます。

次点の候補者と、募集の再開

次点の候補者がいる場合は、すぐに連絡します。日数がたつほど、その候補者もほかの会社で決まっていきます。最終面接の時点で次点を決めておき、結果を待ってもらう連絡もしておくと、ここで慌てずに済みます。

次点がいない場合は、募集を再開します。このとき、辞退の理由が条件にあったなら、求人の条件を見直してから出し直します。同じ条件で出し直すと、同じ理由でもう一度断られることになります。

関係を残しておく

辞退した人は、会社を評価したうえで別の会社を選んだ人です。お礼を伝え、また機会があれば声をかけてほしいと添えておくと、数年後の中途採用で再び応募してくれることもあります。

辞退の連絡に返事をしないままにしたり、不満をにじませたりすると、その印象が口コミとして残ります。口コミは、次の候補者が会社を比べるときの材料になります。

最後に、次の内定で変えることを順番にまとめます。

次の内定から変える5つ

全部を一度に変える必要はありません。1章で計算した辞退率のうち、承諾前の辞退が多いなら1〜3を、承諾後の辞退が多いなら4と5を先に変えます。

  1. 面接の日時を候補者に選んでもらう。応募から面接までの12.1日を、数日に縮めます
  2. 他社の選考状況を聞き、その時期までに内定を出す。辞退は求めず、時期だけを合わせます
  3. 内定と同じ日に、変更の範囲まで書いた労働条件通知書を渡す。求人との違いは対照表で先に説明します
  4. オファー面談と、配属先の社員と話す場を設ける。新卒なら懇親会と座談会を、学業と重ならない時間に開きます
  5. 承諾から入社までの連絡を予定に入れる。中途は退職の手続き中に相談の窓口を決めておきます

内定より前の段階は、別の記事で扱っています。書類通過から面接までに起きる辞退は選考辞退と無断欠席のデータ、面接での聞き方は面接官が使える30問、面接官ごとの評価の差を小さくする方法は評価シートの4段階の回答例が参考になります。

内定後の面談や座談会の予約ページを作ってみる場合は、無料アカウントから作成できます。クレジットカード登録は不要です。

中村 遼

中村 遼 / SailLab 編集部

SailLab 編集部で、営業・採用の日程調整、面接や説明会の受付、士業やコンサルタントの相談の受け方についての記事を担当しています。

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